2012年5月6日日曜日

イギリス人はタフ

イギリス人はタフだ、しかも階級の高い人ほどタフだという話を昨日書いたら、あくあさんからもっと知りたいとのリクエストがありましたので、もうちょっと書いてみます。

「イギリスはこういう国である 」という意見や感想はあちこちで耳にすると思うんですが、イギリスってやっぱり階級社会。階級を避けてはイギリス論は語れないと思うんです。しかしイギリス人自体はあんまり階級の話をしません。よっぽどなかのいい間柄でないとその話はでないと思うんですが、イギリスに住む外人たちは時々この「階級」を口にします。するとイギリス人は、なんかびくっとしてる感じですね。

やっぱり私達外国人は何年たっても外国人だからイギリスの階級社会の外にいるし、中にいる人にとっては口にしにくいトピックなんでしょう。

階級の話をする前に、はっきりさせておかないといけないことがあります。日本では国民総中流とのことですが、イギリスでは上流階級は王室と何らかの親戚関係のある人たちのことです。日本で言えば公家のようなものかな。そして中産階級は、銀行家だとか弁護士だとか医者だとかのホワイトカラーの職種。そして労働者階級は、自分は生産の手段を持たないで、働いて収入を得ている人たち。ブルーカラーですね。

さて話を戻して、このタフさについて一番最初に思ったのは、イギリスで初めて働き始めた頃です。シティーのトレーディングルームにいたので周りは大卒の中産階級の若い人たちばかりでした。それでその一人と話していたのですが、彼はイギリスの寄宿生のプライベートスクールに行ったのですが、毎朝朝食前にランニングがあり、その後冷たいシャワーを浴びないといけなかったそうです。イギリスの水ですからね。真冬なら凍ってもおかしくないくらいの冷たさだと思います。

 最近はそこまでスパルタな学校はないと思うんですが、やっぱり寄宿生の学校って厳しくって「質実剛健」なんじゃないかなあ。 ルイは3月にデボンの水泳で有名な私立学校の寄宿舎に1日体験入学したんですが、水泳部の朝練は遅番は6時から、早番は5時からです。ということは起床は4時半。しかもこれ中学生ですよ。

まあ朝に関しては、階級に関わり無く、イギリスのほうが早いです。シティーで働いていたときはディーリングルームは毎朝7時半ミーティングでした。でも大工や土木業などの労働者階級の職業の人も7時とか8時とかに始業する人が多いし、そういえばその頃郵便屋さんの配達も家を出る前に来ていたので、6時半とかに郵便が来ていた記憶があります。(まあその頃は郵便のサービスがよくって一日2回配達があったんですが、今はそんなにサービスはよくありません。)

一説によると、伝統的には労働者階級が早朝から働いて、弁護士や銀行家などの中産階級は大名出勤で10時ごろから始業だったとか。シティーも昔は株式取引所のフロアだとかは中卒のたたき上げの若者が早朝から走りまわって働いていたそうです。昔は株屋なんてのは中産階級の仕事ではなく、上昇志向のある労働者階級のたたき上げの仕事だったそうです。それがシティーではサッチャー政権以来のヤッピーのがつがつしたエリートが朝早くからはたらくようになったとか。

話がそれました。 タフさの話です。

昔で言えば植民地の時代はイギリス人の貿易会社の経営者だとか、中産階級の人たちがインドだとかマレーシアだとか香港だとかに家族と駐在しましたが、そのころなんてコンディションはすごく悪かっただろうし、不衛生で伝染病もよくあることだったし、それはそれは大変だったそうです。

まあそういった人たちは、現地人に馴染もうなんて気持ちは全然ないし、現地の文化だとか人に対する思いやりや親睦の気持ちも無かったようなので、同情する気にはなりませんが、それでもイギリスでぬくぬく暮らしてきた良家の奥様達やお子達がそういった途上国で暮らすのはすごくタフだったようです。

それから軍隊のエリート達も中産階級の仕事です。これももちろんすごくタフな世界。チャールズ皇太子の弟のアンドリュー王子は海軍にいたし、去年結婚したウィリアム王子もハリー王子も陸軍に所属しています。たぶん中では、周りの人はそれなりに気をつかってはいるものの、他のオフィサーたちと同じような扱いになっていることと思いますよ。

特にイギリスでは産業革命以降は中産階級の子息は将来、軍隊を率いたり植民地を管理したりしないといけないから、厳しいタフな教育がされたのだと思います。

身近な話になると、昨日のエックスムーアチャレンジなんてとってもタフなイベントだし、子供達のライフセーバーもこのイギリスの激寒の夏の日に大荒れの海に入ってトレーニングだとか、私の普通の母親の本能ではとても自分の子供にやらせたくないことばかり。ボーイスカウトなどは嬉々として泥だらけのコンディションで息が白いくらい寒くてもキャンプしたりしてるようです。8歳から参加できる地元のラグビークラブも、入会説明で、「どんなに天気が悪くてもトレーニングは中止にはなりません。」と言われました。

そしてこれもよくよく見回すと、やっぱり中産階級の家庭がこういうイベントに取り組んでるんですよ。 もちろん別に壁があるわけじゃないので誰でも参加できるんですが、結果としてはそんな感じです。

繰り返しますが、イギリス人ってタフですよ本当に。日本人なんて比較するとひ弱だと思いますね。しかもそのタフさってすごく基本的な、野性的な動物的なタフさです。これってやっぱり寒くて雨が多いことに関係してるのかなあ。

でも反対に日本の入社数年目の会社員なんて見てると、上司にいじめられたり虐げられたりされても耐えてるし、中学高校のクラブなんかでも先輩が無茶苦茶威張ってるし、その辺は打たれ強いというか、自虐的なタフさはあるのかな。

たとえて言えば、イギリス人と日本人の20歳の男女10人ずつを、アマゾンのジャングルみたいな文明とは遠く離れた土地にテントとバケツとシャベルだけ渡して放り出したら、日本人のほうが絶対先にギブアップするだろうなあと思います。

でも逆に人間関係のこじれにこじれた会社のねちねちと嫌味な上司の下で、つまらない仕事を毎日遅くまで 働かせたら、イギリス人のほうが絶対先に根を上げると思いますけどね。これを精神的なタフというのは、私は抵抗がありますが。(むしろ自尊心の無さだと個人的には思ってます。)

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8 件のコメント:

あくあ さんのコメント...

なるほど、教育によるタフさなのね。それはあるだろうなぁ。

日本はと言えば、この前、最近の若者が新しいタイプのうつ病にかかることが増えているという番組をやっていました。自己中心な性格から上司や会社を逆恨みして、うつ病の診断書をもらって会社を長期で休み、海外旅行をしたりしているような人が増えてきたとのこと。昔の若者のようにスパルタな扱いをせず、やさしい言葉をかけ、よく話を聞いてあげなければいけないということでした。

これじゃ、タフなイギリス人と戦うことも出来ないね・・・。

Atsuko さんのコメント...

へえ、そうなの。確かに引きこもりだとか、変な精神病みたいなのが増えてるみたいだよね。家で過保護に育って、会社に入ったら、新入社員はいじめて鍛えるみたいな上司も多そうだし。まあ日本の人間関係って結構歪んでるから、変になる若者も多いわなあ、そりゃ。

イギリスでも、学校も行かず勉強もせず、就職もせず、失業保険もらって一生だらだら暮らすような若者も多いですよ。なので時々、「徴兵制を復活させろ」という極論も聞きます。まあどこもおなじやな。

匿名 さんのコメント...

この話題おもしろい。イギリスね、確かに階級社会ですよね。なんか暗黙の了解のような感じで、口で言わなくてもみんな知ってるって感じ。そうそう、イギリス人って、特に私のイギリス人の夫とかの交友関係をみていると、同じ階級の同じような環境で育った人たち同士が交流しているって感じがします。

イギリス人は日本人に比べて図体が大きいから、確かに体力的にはタフで有利ですよね。私の夫も忙しいときや緊急のときはは週に70時間くらい働くけど、寝込むことなく元気です。筋肉もりもりで、図体も大きいですけどね。

あと、イギリスはエリートほど精神的にもタフでよく働く気がします。特に専門職で生き残っていくためには、フレッシャーに耐えられる精神的なタフさとヤル気や意欲(=drive)が不可欠みたいですね。やはり、「しっかり給料を払ってるんだから、その分しっかり働け!」みたいな雰囲気があるし。あと最近は不景気で、専門職の人でも、サービス残業をすることも多くなって、固定給で週に50時間位働いているっていっている夫の友達が結構いますよ。

Atsuko さんのコメント...

匿名さん、日本人はみんな中流の上を目指してるような感じですが、イギリスでは中産階級は中産階級の、労働者階級は労働者階級の規律とモラルがあるみたいですよね。イギリス人ってそのことをどう思ってるんだろう。あんまり口にはしないですよね。でも政治では階級社会の垣根を無くそうというのは目標としてよく揚げられてるので、良くないことだとの認識はあるんでしょうね。だからあんまり語られない話題なのかも。

この記事を書いて改めて思ったのですが、イギリス人の肉体的タフさって、少なくとも一部は雨に関係あるんじゃないでしょうか。ちょっと位の雨ならぜんぜん傘なんて刺さないし。傘を持ってないという人もいるくらいだし。それに遠足でもスポーツでも、小雨くらいならぜったい中止にならない。夏のミュージックフェスティバルなんて雨で泥だらけになるのが定番になってるくらいだし。

それから日本の女性のか弱さも、行き過ぎると、こちらではちょっと奇妙に見えるんじゃないかなあ。か弱い女性がいいという価値観はないですね。

匿名 さんのコメント...

てっいうか、イギリス人が階級社会をどう思っているかというよりも、こればっかりはそういう家族のもとに生まれて来たってことで、むしろ運命みたいな感じに受け止めているんじゃないかなあ。まあ、みんな「ないものねだりをしても仕方ない!」みたいに開きなおっている気がしますが。だって人間は生まれてくるところを自分で選ぶことが出来ないし。むしろ日本人のようにみんなが同じようなものを目指す、そうすることがある程度可能、そうあるべきっていう状態の方が不自然なんだと思います。

イギリス人が階級社会を悪いと思っているかどうかは大きな疑問です。確かに、social mobility ってことばを使う政治家はたくさんいますが(もちろん主にLeftの政治ですが。ただ、階級社会をなくそうというより、貧困層に属する子どもや若者を助けようみたいな感じがしますが。

ただ個人的には、イギリス人特に中流階級や特権階級の人たちは、やはり自分の階級を守ろうとする意識が強い気がします。upper-middle や特権階級は子どもを私立の学校に入れて教育をつけて、ネットワークを作らせるし。中流階級も自分達の居場所を守るため、一生懸命、子どもを教育するし。学校選択の際にいい学校のcatchment-areas に家を買うなんていうのも、そのあらわれの気がしますが。

確かに、イギリスは雨のみならず、天候が不安定だから、その気候に適応するための免疫力が育っているのだと思います。ただ、体格もしっかりしているし、丈夫にできていることも確かだと思います。男性の平均身長も180cmぐらいあるし。後、イギリス人よく食べるますよね。やはり、ひょろひょろのやせ気味よりもちょっとぐらい太っている方が頑丈で体力的にも有利なんだろって気がしないでもないですが。

Atsuko さんのコメント...

階級については、昔ほどは固定されていないですよね。大学をでればミドルクラスになるし、水道管職人でも大工でも、自分でビジネスを始めれば定義的にはミドルクラスになるし。

食べる量に関しては、昔イギリスに始めて来た当時は、イギリス人ってよう食うなあと感心しましたが、今では自分もすっかりイギリス人と同じくらい食べるようになってしましましたよ。

食べる量に関してはイギリス慣れしても、寒さと雨にはなれないですねえ、何年住んでも。というかむしろ寒さに関しては年を取るごとに辛くなります。雨に関しては、そういえば私もめったに傘はささないです。

匿名 さんのコメント...

イギリスには、社会科学の研究や統計を取る時の階級の付け方の定義があります。マスコミや研究者はその定義に基づいて、人々の階級について論じるみたいです。確か階級を決めるカテゴリーは職種のみならず、自分の家を所有しているかとか、収入とか、教育のレベルとかがあります。大工や配管工で、自営で人を雇って仕事をする場合は、マネージメント職になるから、中流階級になるんでしょうね。

確かに大卒で専門職についた場合は、中流階級になるけど。ただ、イギリスで、大卒までいける人は殆どの場合が中流階級の人だと思いますが。あと、来年から大学の授業料が3倍近くあがるから、これまた貧富の差や階級の違いなどで、教育を受けれる人とそうでない人のギャップが増えてくると思います。

私の周りでも、「家のローンは何とか済んで、大きい家に買い替えようかと思ったけど、数年後に子どもが大学に行くから、ローンの分のお金は子ども2人の大学資金として貯めることにしたので、家は買い替えないことにした」なんていっている人も何人か知ってますし。

イギリスも多民族国家になって、多様化がすすんでいるし、まあ昔ほどのきっちりした階級付けはないかもしれないけど。ただやはり、何だかんだいっても、やはりsocio economic background による格差がある国だと強く感じます。

Atsuko さんのコメント...

匿名さん、一応学生ローンがあるのでこれでまかなえるし、卒業後年収2万ポンドだかになるまで返さなくていいとかいってますが、やっぱりそんなに大借金をするのは抵抗ありますよね。とはいえきっとうちの子供が大学に行く頃は、仕送りなどを入れると親が払って上げられる様な額ではなくなってるでしょうから、よっぽど裕福な家で無い限りはみんなローンを借りるんでしょうが。
母子家庭だとか、家の収入で免除になったりするそうなので、それでもがんばる人はがんばることでしょう。それから実は卒業後20年だか25年だかすると、返済免除になるそうですよ。