ヘレンケラーの話の続きをまた書きます。
この伝記の最後から3分の1くらいは、彼女たちがお金のためにどれだけ奔走したかということがいろいろ書いてあります。考えてみればヘレンと先生の女性二人、これといって経済活動をしているわけでもないのだから、もちろんそれは深刻な問題だったことでしょう。
今と違って、特に裕福な家の出身の女性がするような仕事、今で言うキャリアははその頃は無かったんでしょう。ましてや盲目の人が働く場所なんて皆無だったことでしょう。社会保障もないし、年金も無い。若い時はともかく、年をとってからも何とかして自分でお金を捻出しないといけません。
ヘレンのお父さんは裕福だったので、後年はビジネスが行き詰ったとはいえ、土地だとか家だとか資産はあったとは思うんですが、あの時代の裕福な家の出の女性は、それなりのライフスタイルしか送れなかったんですね。きっとお金が無い無いといいながらも、住み込みのお手伝いさんとコックさんががいる家で暮らしていたことでしょう。伝記にも、「ヘレンとサリバン先生は節約することが下手だった。贅沢が好きで、お金が入ってくるときはどんどん使い、無くなると資金作りに奔走した。」と書いてありました。
お金を稼ぐために、ヘレンは本も書いたし、講演のツアーを延々としたそうです。その一環で日本にも来たんですって。
そして講演だけでなく、庶民向けの娯楽ツアーのようなものにも参加し、歌手やダンサーなど、その時代は地位が低く見られていた人たちともショーをしました。それをサリバン先生はすごく嫌っていたらしいのですが、ヘレンは周りの役者や歌手、ダンサーたちとも気があい、結構楽しんでいたそうです。
ヘレンケラーって、三重苦を克服した天使のような女性と思われていますが、彼女自身はそれ以上にすごく生き生きした、エネルギーいっぱいの人だったようです。もちろん頭もすごくよく、英語を含め5ヶ国語をマスターし、ハーバードの姉妹校(その頃は女性はハーバードにいけなかった。)を卒業しました。自分と先生の生活を維持するために、次々とお金を稼ぐ方法を生み出し、それだけでなくチャリティーの為に活躍しました。
先生が病気になり死ぬ数年前からは、お金の為に奔走するのが嫌になり、ただ盲人の社会的地位を向上させるためのチャリティーに全力を注いだそうです。すると世の中はよくできたもので、ヘレンの貢献に深く感謝したそのチャリティーは、ヘレンを金銭的に生涯世話をすることを提案しました。年金ですね。
私が昔読んだ伝記には、金銭的なことなんてぜんぜん出てませんでした。昔の伝記には偉人を聖人化する傾向があったんでしょう。最近の子供向きの本は、こんなことや先生やヘレンの恋愛のことなども書いてあります。「ヘレンが生理痛で寝ているときに」なんてこともありました。
なんか気づかないうちに時代ってすごく変わったんだなあという気がしました。
4 件のコメント:
あつこさん 偉人伝というレッテル(偏見)に左右されずに、読まれた甲斐があったようですね
嬉しいことです
三重苦とは、まさに想像を絶する世界
そのハンディキャップを乗り越えて壮絶に生きられたヘレンケラー
彼女も霞を食べて生きているわけではないですから、ね お金に苦労した話、分かりますですねぇ
あつこさんの読書感想文 単に感想文でないものが伝わってきます
ありがとうございます
そういうふうに時代の変化を感じさせてくれる本に出会えてよかったですね。面白かったです。歴史の教科書なんかもいろいろと歪められてるんだろうなぁ。真実は一冊の本や記事からじゃわかりませんね。
こんのさん、こちらこそありがとうございます。ほんの偶然手に取った本だったんですけどね。子供の本ということで、余計偏見なくオープンマインドで読めたのかもしれません。
あくあさん、ありがとう。伝記なんかは特に、著者の主観がすごく加わってくるだろうし、編集者の意図も入ってくるだろうし、100パーセント真実なんてことはありえないね。考えてみれば、普通の人間でも人によって評価がぜんぜん違うということもあるもんね。
伝記もそうだけど、歴史の本なんて本当に書きたいほうがいくらでもゆがめることができると思うと、何事もそのまま鵜呑みにしてはいけないなあと思います。
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