2011年4月3日日曜日

また空気を汲々と読まなければいけないのでしょうか

このブログに時々コメントを下さるこんのさんのブログに、さくらんぼの木の世話をした1日の話が昨日載っていました。そして最後に「世の中のたいへんなそれはあるけれど、それとは別にここにはここなりの営みがある。」と書いてありました。

同じ日に日本の知人からメールが来ました。日本で震災以来1日何度「がんばろう」という言葉を聞く事か。勇ましい言葉の飛び交いすぎにちょっと疲れた。こういう自分は非国民だろうか。そういう内容でした。

こういうのを読んで、なんか嫌な気がしてきました。外国に住む私ですら、タイガースニュースを読んでるとちょっと後ろめたく思ったり、 ブログに地震と全然関係ないことを書くと、「こんなこと書いてていいんかな。」と思ったりするくらいですから、特に関西地方など生活があまり影響を受けてない土地の人は、後ろめたいような申し訳ないような気持ちを持っていたりするんでしょうか。

何がいやかというと、被災しなかった人は、そうやって他人の目を気にして、気を使いながら、空気を読むことに汲々としながら生活しないといけないようになってきてるのかなあと思ったからです。

被災した方にすれば、今までどおりの生活をしてる人や芸能ニュースやお笑い番組なんかをやってるのを見ると楽しくないというのは理解できます。失恋した人が恋人同士を見るとつらくなったり、不倫してる人が結婚式の招待状を受け取るとむかついたり、子供ができない人が妊婦を見ると目をそらしてしまったりするのと同じ気持ちなんでしょう。やっぱり人間ですからね。なかなか自分がつらいときに幸せそうにしてる人を見るのはつらいという気持ちはあるでしょう。

でも被災しなかった人は、そのことを後ろめたく思う必要は全然ないと思います。エイブラハムが書いてたけど「『自分はとても健康なので病気の人に悪いので、しばらく病気になろう。』と思う人はいない。」ように、被災しなかった人がそのことを後ろめたく思っても何の足しにもならない。
そういうわけで何でもかんでも自粛ムードらしいですが、これもどうかと思いますよね。たとえば飲食業なんかで、経営が成り立つか成り立たないかの瀬戸際でがんばってる店なんかは、経営危機に立たされるんじゃないでしょうか。普通に生活できる人は普通に生活したほうが、少なくとも経済という面では絶対良いような気がするんですが。

たぶん被災地の方も、別に関西の人が無事で普通に生活してるのが嫌なわけでも、エンタメ番組を見て笑ってるのが悪いと思ってるわけでもないと思うんですよ。ただ地震と津波の被害は終わったわけではなく、自分達の日常の苦難と不安はこれからも長期的に続くであろうというのに、それが時間とともに、というよりもまだ1ヶ月もしないうちに少なくともマスコミの扱いが小さくなって、驚いたり悲しくなったり、今は義援金やチャリティーイベントで盛り上がってる人たちの記憶の中ですごいスピードで風化してしまうんじゃないかと不安に感じてらっしゃるんじゃないでしょうか。

風化していくというのは距離が離れていれば離れているほどそうだと思います。イギリスでも地震直後はそればっかりだったけど、数日でリビアにヘッドラインが移って、今ではほとんど地震関係のニュースも原発関係の報道もないですね。日本国内でもまず九州や関西地方から、そして首都圏と、忘れられるというわけではないけど、マスコミでの取り扱いが小さくなるのは仕方のないことだと思います。

でも個人レベルでいえば、風化していくというのは決して悪いことではないと思います。災害や戦争や子供を失うなどの悲劇を経験している人でも、傷は決して癒えないけれど、時間とともに心の痛みは少しずつ激しさを失っていく。そうでないと人間って生きていけるものではありません。心の痛みとは別に、生きている限りは次々と新しいことが起こって、そういう新しいことに気を取られる時間がだんだん長くなっていく。それは個人レベルでも社会レベルでも同じことなのではないでしょうか。

阪神大震災からもう15年もたって、神戸に行くとぜんぜん地震があったなんて思えないくらい復興してるけど、それでも大阪の新聞ではいまだに「阪神地震の悲劇」みたいな題の記事が連載されています。それを読むと、あの地震ですべてを失って、今も生活がぜんぜん立ち直ってない人や、心の傷がまだまだ生々しい人の話しがでています。6000人以上も死んでいるんですから当然のことでしょう。

でも結構すぐに立ち直った人もいるだろうし、その時は家やら工場やらを失ったけど その後の復興でそれとは逆に儲けた人だっているでしょう。大多数の人は時間とともに立ち直って、少なくとも表面上は普通に生活していると思います。今回の地震の被災者の方の中でも、割合早く立ち直れる人もいれば、一生立ち直れない人もいるのでしょう。

もちろん「被災地の方」という一口で言ってしまうのもよくない。「ここはこんなに大変なのに、同じ日本人で普通にお笑い番組や野球を見てる人がいるのを見ると悲しくなる。」という人もいれば、「被害に会わなかった人は、今までどおり普通に暮らすのが一番」と思ってる人もいることでしょう。

何が言いたいかというと、誰もが自分で考えて一番良いようにするべきなんじゃないかなということです。お笑い番組を見るなんてけしからんと思う人は見なければ良いし、もう私は今までどおり普通に生活したい、テレビもお笑い番組を見たいと思う人はそうすればいい。地震の被災者のためを思うと、とても宴会やら遊びにいったりする気にならないという人は自粛すればいい。別に経済のためにと無理やり普通にする必要もない。今は自分の人生の重要な転機なので、これ以上地震のことに注意を払いたくないという人もいるでしょう。震災でなくなった人たちへの敬意を示すために、1年は喪に服そう思う人もいるかもしれません。地震の一連の報道を見て人生観が変った。これからはボランティアやチャリティーにがんばろうと思った人もいるでしょう。

被災者の人もそうでない人も、誰もが別の立場にあって別の考え方や見方を持ってる。それを「こうするべきだ。」「こういうのはよくない」などと言いだすと、 ますます風通しが悪くなって生きにくくなるんじゃないでしょうか。

それとこれは関係ないことですが、外国に住むものの立場から見ると、こういう周りへの気の使い方はすごく日本的だと思いますね。別にそれが悪いことというわけじゃないし、むしろそのせいで日本は世界が驚くくらい早く復興するんじゃないかという気がします。でも、私はアメリカに住んでいるわけではないので間違っているかもしれませんが、たぶんルイジアナのハリケーンの時、自粛だとか被災しなかった人が肩身の狭い思いをするなんてことはなかったんじゃないかな。

ところでこの最初に書いた『非国民』なんて言葉、今でも使われてるんでしょうか?明日にでも日本国籍捨てるかもしれない私なんてそれこそ非国民だけど、別にそういわれても悪口とは感じませんけど。

日本人がそんなに偉いんか?

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6 件のコメント:

こんの さんのコメント...

あつこさん 長い文をいちいち頷きながら読みました
こういうのを真摯に書かれてることが、とても嬉しく思います
大筋では、あつこさんのそれに同調できます
(そうなんだよなぁ)と思いますです
いろいろな意見や考え方があっていい
「非国民」という言葉や文字は、あまり聞かないようです
戦時中には、使われ、そう言われることを恐れたようですが...
書きたいこともっとありますが、自分のブログで書くかもね(笑い)
ありがとうございます

あくあ さんのコメント...

うん、なんか、そういう日本人的なところがやっぱり嫌なんですよね。空気を読むとか人にどう思われるか気を使うとか。そういう次元の話じゃないと思います。まあでも、世の中いろんな人がいるし、いろんな人がいること自体はいいとか悪いとかいうより事実として当たり前のことですよね。こうすべきなんて単一の正義はないと思います。アブラハム的にもね。

しかし、そうやって風化させちゃうから歴史は繰り返すんだろうなぁ。良くも悪くも。

Atsuko さんのコメント...

こんのさん、最後まで読んでくださってありがとうございます。実は書こうかどうか迷ったんですが、まあ自分のブログくらい好きなことを書こうと思って書きました。
非国民ってやっぱり死語ですか。でも今はこういう国を挙げての非常事態なのでまた復活するかも?

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、こういうときこそマスコミのあり方が問われるでしょうね。イギリスは私が絶対的に信頼しているBBCがあるけど、日本はNHKはお金がないし民放はスポンサーのほうしか向いていないし。ネットでも救援物資は余ってるなんて記事も載っていて、被災地の現状、どうしてこの時代になってもきちんと届かないんだろうと不思議というかもどかしいと言うか。

それにしてもこれを書いていて気づいたんだけど、大阪って夜9時以降テレビってお笑い物以外やっていない(ちょっと誇張。でもそんな感じ)みたいだけど、関東でもそうなのかな。

あくあ さんのコメント...

NHKは問題ですね。御用学者を使って安全安全といかにもな世論形成をやってますよ。あれしか見てないおじいちゃん、おばあちゃんは信じちゃうから危険です。

被災地の情報は混乱してますね。宮城県は物資は足りてるといい、宮城県亘理郡は緊急で必要だというリストをHPにあげていたりします。電話が通じてないところがあったり、ガソリンがなくて思うように人が交流出来てないからこうなっちゃうんでしょう。あと、いつものことですが、テレビは世論形成のために都合のいいことしか流しませんからね。ま、その点、最近はネットの生放送なんかもあって、もっと激しい議論なんかも聞けるようになっているので、情報強者にとっては言論の自由が広がっている気がします。でも、その分、情報格差は広がってるでしょうね。

テレビはね、東京でも6時とか9時とか10時とか11時の決まったニュース番組以外はエンタメになってますね。ケーブルテレビの1つくらい被災地の情報ばかり一日中やってるチャンネルがあってもいいと思うんだけど。一日の中で震災番組をひとつもやってない時間がかなり長いです。数えてみようか。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、NHKってそんなにお上の息のかかった団体なんですか。知らなかった。イギリスはその逆で、特に保守党政府のときは対立が激しく、政府がBBCを訴えるなんてこともありました。

こちらに来て思ったんだけど、日本って小さいようで実はすごく広いからね。情報って東京から地方への方向はよく届くけど、逆方向は届きにくいのかな。物資の不足状況が正確に流れてないと言うのは問題ですね。

日本でもBBC24みたいに一日中ニュースを流してる局ってないの?