2011年1月28日金曜日

読書感想「ベートーヴェン」

平野昭という著者の上記の本を読みました。作者は武蔵野音大を出た大学の教授です。

数年前にイギリスで3週間ほど連続でベートーベンの人生のドラマ化したものをやっていました。それが映画の「アマデウス」みたいでとても面白かったんですが、何か事情があって全部見れませんでした。それでこの本を日本で見かけたときに興味を持って買いました。 別にベートーベンファンとかクラシック音楽ファンというわけではないんですけどね。

でも本としてはちょっと物足りないというかがっかりでした。音楽の大学教授が書いたので、史実に忠実にというのが一番の課題だったのかもしれませんが、ただずらずらと何年に何があって、どういう依頼主からどういう注文があってどういう曲を作曲したかなど、かなり事実中心に書いてあります。ウィーンのどこそこ卿とどういう関係にあり、どこのコンサート会場で音楽会をしたかなども詳しく書かれています。まあ正直言って、音楽に詳しくない一般人には読みにくいし、あまり面白くもありません。

でももちろんそれだけではなく、ベートーベンの人間を描くようなエピソードもたくさん書いてあります。弟達との関係、甥との関係など。ご存知のようにベートーベンは生涯独身でした。それは失恋の痛手を深く負ったからで、彼の音楽はそれが糧になっている というようなことを昔学校で習った記憶があるんですが、実際はそんなにロマンチックなものでもなかったようです。何度か恋愛をしたものの、年の差があったり、相手が友人の妻だったり、人妻だったりで、まあよくある理由でうまく行かなかったようです。別に一度大恋愛をして、それからひどい痛手を受けて一生独身で通したというわけでもなかったようでした。

この本を読んで一番感心したというかすごいなあと思ったのは、超有名な文化人との交流です。彼がウィーンに行ったのはハイドンの紹介だったし、35歳の頃はゲーテと数回面会しています。シューベルトとも近くに住んでいたらしいのですが、これは運悪い偶然が重なって面会は無かったとか。

そのうちでも一番すごいと思うのがモーツアルトと2回会っていることです。モーツアルトはベートーベンより14歳年上で、彼が音楽をやりだした頃にはウィーンの神童の話は彼の父親の耳にも入っていたそうです。

それにしても歴史上の作曲家の中でモーツアルトとベートーベンほどの有名な音楽家はいません。日本人でもイギリス人でもきっと誰でもひとつやふたつはモーツアルトとベートーベンの曲をハミングすることができるでしょう。そんな作曲家他にはいません。バッハやショパンを鼻歌で歌えますか?できないでしょ。

この時代のウィーンでそういうことが起こるという歴史の必然性を考えてみても、人類史上最高の音楽の才能を与えられたといっても過言でないこの二人が出会っていたというのは、すごいと思いませんか?


彼が聴力を失ったのは31歳のときでした。彼は9つ交響曲を書いていますが、第3番目以降はそれ以降に書かれています。聴力を失いつつあると自覚したときは自殺も考えたらしいんですが、57歳で死ぬ間際までそれ以降25年も第一線で作曲し続けたのだから、これはすごいことです。 聴力を失っても、あまり音楽生活には影響は無かったみたいです。むしろ一般生活で、譜面の出版社との交渉や社交面での問題のほうが大きかったみたい。

そのときの彼の絶望は この本にはあまり大きくは取り上げられていません。でも想像に余りありますね。私のような普通の人間でも聴力を失ったらショックです。それがよりによって音楽家に起こるなんてなんて。

それにね、考えるんですよ。きっと彼は無茶苦茶音楽が好きだったでしょう。一般人よりも何倍にも敏感に音を捉えることができて、音楽から得る幸せはそれはそれはすばらしいものだったに違いない。それが人生後半は、自分のものも人のものも聞くことができない。音楽を聴くという経験なしで人生を送らなければならなかった。

そして自分が作曲した交響曲や室内音楽を初めとするたくさんの曲も、全部頭の中で聞くだけど、一度も 耳にすることができなかった。それってすごい悲劇だなあって思いました。

ああまた忘れるところでしたが、体重は51キロと変わりなし。うーん、気をつけてたつもりなんだけどね。まあでもクリスマスで太った分は落ちたので良しとしましょう。

2 件のコメント:

あくあ さんのコメント...

そういう悲劇ってあるんだよねっていうか、そういう人のそういう悲劇だから有名になって私たちの知るところになるんだろうけど。まあしかし、私も脳腫瘍やったとき、失明するかもと半分覚悟を決めたけど、なったらなったでその上で生きていくしかしょうがないから、開き直れればなんとかなるんじゃないかなぁ。

体重って簡単に減らないんだよねぇ。という思いこみがいけないんだろうけど。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、一体何が原因で聴力を失ったのか分からないけれど、こういうものきっと現代なら防げるか、すごく良い補聴器があるんだろうなあ。

しかし脳腫瘍っていうのは大変な経験だったね。そういうことがあると人生感変わるでしょう。

体重は今回は痩せられそうな気がするんだけどな。46キロの気分にならないといけないんだけど、これがそう簡単ではないんだよね、意識を変えるのって。