2010年2月25日木曜日

ロンドン3

ロンドンでは、朝9時半に総領事館でパスポートの申請の手続きをして、4時に受け取って、夕方の電車まで時間がたっぷりあります。友人と会う予定以外の時間をつぶさなければいけません。

時間をつぶすといえば、ロンドンほどすばらしいところはありません。買い物、劇場、映画と、何でもお金さえあればやることはあります。でもお金のない私は美術館に行くことにしました。ロンドンは誰もが知っている大英博物館のほかに、有名で大きい美術館がたくさんあります。中でも有名なのはナショナルギャラリー、テートギャラリー、テートモダンギャラリー。どれも無料。それで私はナショナルギャラリーに行くことにしました。場所は便利なトラファルガースクエアの向かい。

10時くらいについて地図をもらってプラン作り。何しろ部屋が60くらいあるのでとても全部は見れません。それで18世紀以降の絵を中心に見ることにしました。それだけでもたくさんあるので、全部いちいち見てられません。興味のあるのだけはしょって見ます。イギリスの有名な画家のゲインズバラやターナーが数点。それから次の部屋ではゴヤ。いくつかの部屋を回って、いよいよスーラーなどの印象派の部屋に。

すると10時45分に館内アナウンスメントが。なんと今から職員のストで、閉めるから出て行ってくれとのことです。イギリスだよなー、まったく。1時からまた開くそうです。向こうにはゴッホのひまわりがかかってるのが見えます。でも見れない。

それで仕方なく隣の美術館、ナショナルポートレートギャラリーに行きました。ここも無料。大きさはナショナルギャラリーほどではありませんが、それでも3階建てでかなり大きい。ここは肖像画がおいてある美術館です。1階が現代、2回が19世紀以降、3階がその昔です。私は歴史に興味がないので、1階と2階だけ行きました。ナショナルギャラリーほどは有名な絵はありませんが、それでもよく知られたプリンスチャールズとダイアナ妃の絵や、アンディーウォーホールのエリザベス女王の肖像がありました。ほかにもなかなかいい物がありました。

中でも心を引かれたのは、5年ほど前に脳腫瘍でなくなったモー・モーランという女性の大臣の大きな肖像でした。彼女は労働党の大臣で、北アイルランド問題解決のために活躍した人です。率直な庶民的な人で、脳腫瘍が治ってからも何年も活躍しました。髪の毛が抜けてかつらだったのですが、時々暑いといってはずしたりするような人でした。日本人の政治家があんなに国民に愛されるなんてありえないくらい、庶民に敬愛されていた人でした。その彼女のカラフルな大きな肖像画があったのですが、彼女の人柄が出ていて、なんか涙が出そうになりました。

ここを1時間ほどで出て、友人とランチに。その後、はじめの予定では、午前はナショナルギャラリー、午後はテートギャラリーだったのですが、朝追い出されて見たいものが見れていなかったので、またナショナルギャラリーに戻りました。

まっすぐに印象派の部屋に戻って、いよいよ有名な名前の並ぶ部屋を回りました。モネー、マネー、レノワー、ピサロ、ゴッホ、ピカソ、ゴーギャン、デガ、クリムトなど、よだれが出そうな有名な画家の絵がかかってます。外国人の学生の団体を連れて、美術館員の人が案内をしています。それにちょっと混じって聞いているとあっという間に時間が過ぎてしまいました。ここを3時に出て総領事館に向かいます。

私は昔ここから歩いて20分くらいのところに8年くらい住んでたんですよ。だから来ようと思えば毎週でも無料でこんな絵を見にこれたんですが、もちろんその頃はたまに気が向いたときに年に1度くらいくるくらいでした。

うーん、こういうのが無料なんだなあ。建物や美術品の価値は想像もつかない額ですが、そのほかにも日々の維持費だけでもすごい額のお金がかかってるでしょうね。それを住人でも観光客でもただで見れるって言うのは、すごいですよ。何のかんの言ってもイギリスってやっぱり腐っても鯛。本当に懐の深さが違います。

逆に言えば、これは国民の共有する財産であって、税金を払っている私もあのゴッホやクリムトの絵を6百万(イギリスの人口)分の一所有してることになるんです。こう考えると、急にすごく人生が豊かになった気がします。

イギリスに住んでいる人だけでなく、日本人だって今はかなり安くロンドンにこれて、こんなすばらしい美術品をただで心ゆくまで鑑賞できます。本当にすばらしいことです。

ちなみに今回一番心に残った絵は、ゴッホの杉の絵です。なんかね。妙に心に惹かれました。美術館員の人がゴッホについて情熱的に語っていたからというのもあるんだろうけど。彼って27歳出始めて筆を取って37歳で死ぬので、10年しか描いてないんですって。

6 件のコメント:

こんの さんのコメント...

あぁ、「垂涎の的」的な今日のブログですなぁ 絵が大好きで、自分でも描いてましたからね
さすがイギリスですねぇ 
ロンドンで暇だという気がしないというのは当然でしょう
イギリスは、世界中の美術品をもっていますからなぁ
あつこさん ありがとうございます

あくあ さんのコメント...

短期間でとってもロンドンを有意義に満喫したようですね。素晴らしい。しかし、大英博物館の展示品は、結構盗んで来てるものが多い気がしたんですけど?

本読みと山歩き さんのコメント...

最初のロンドンでは、大英博物館へ行きましたね。ほとんどが略奪品で各国へ返したれよ~、無料は当たり前だ~と正直思いました。

昨年は、ナショナルギャラリー、フェルメールをメインにゴッホ、アングルなどを見に行ったのですが、ここの無料は「イギリスの懐の深さ」を感じましたね。
パンフレットにも「国民のもので入場用は無料です」と書いてありました。
まあ、国が税金で買っているわけで、国民には無料というのは、理に適っていますが。
でも支援寄付ボックスというのもありましたね、皆お金を寄付しているのかもしれません。

いずれにせよ、
ロンドンとパリはなんだかんだでやっぱり大都会です。たいしたもんです。

Atsuko さんのコメント...

こんのさん、そうでした、こんのさん絵がお好きなんでしたね。一度いかれたらどうですか。お金じゃ買えない貴重な体験だと思いますよ。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、そりゃあれだけ世界中で好き勝手に植民地作ってた国だから、そこからもらってくるのも平気でしょうね。かばうわけではありませんが、「こんな貴重なものをこんな野蛮な国においておいてはいけない。イギリスに持って帰って保護しなければ。」と思ったようですね。それで確かにそのおかげで今も残っているものもたくさんあると思います。

Atsuko さんのコメント...

山歩きさん、大英博物館は人類学的には貴重なものがたくさんありますが、普通人にはあまり面白くないような気がします。昔はキリンの剥製などが置いてあって、「大ラッセル通りの珍し物屋」と呼ばれてたそうです。やっぱり美術館のほうが面白いですね。

ナショナルギャラリーやテートのほかにも、自然史博物館とか科学博物館とか、すごいものが全部無料です。大きさがまたすごいんです。自然史博物館は恐竜の骨がいっぱいあって、いつ行ってもすごく込んでます。一度ぜひお子さんたちと。大英博物館より何倍も面白いですよ。