2016年3月30日水曜日

イギリスの受験産業

日本では塾や予備校に行くのは当たり前なので、「受験産業」という言葉に抵抗はないと思います。

イギリスでは基本的に、塾も予備校もありません。中学高校では、どこの学校も何かの補習があるのが普通です。それでも勉強が遅れていれば、人によっては家庭教師をつける人もいますが、そういうケースは珍しいし、いい先生を探すのは難しいと思います。なので、受験産業と言う言葉は存在しません。参考書や問題集も、存在するけど、日本のように本屋にびっしり何種類も並ぶということはありません。

それがですね。

息子が医学部受験を目指すようになり、その医学部志願者を対象とした受験産業が存在することを知りました。

医学部に行こうかなあと考え始めた時点で、「医学部受験ガイドコース」みたいなものがあります。医学部は普通の学部の受験とはかなり様子が違うので、そのためのノウハウや、自分が本当に医者になりたいのかの適正を自分に問いかけるコースのようなものだと思います。

値段は1日で200ポンドとか300ポンドとか。3~5万円もします。我が家は幸か不幸か田舎に住んでいるので、距離的にも金銭的にも行きませんでした。

それから、受験に向けて本格的に準備を始めた生徒向けの、似たようなコースがあります。2月に1件、日帰りできる距離のエクセターで行われた半日コースがあったので、これにはルイを参加させました。感想は、「なかなか役に立った。」とのことですが、合否に響くほどのインパクトもなさそうです。

まあ、一件位行って置いたほうが、受験失敗したときに後悔が少ないだろうと思って行かせたので、予想通りでした。

医学部受験生は、志願する前の夏に、「医療向けの知能テスト」のような試験を受けないといけません。知能テストなので受験勉強することは出来ないのですが、テストの様式になれる必要があり、1~2ヶ月は練習する必要があると言われています。

そのためのコースというものもあります。2日で300ポンドくらいらしいです。参加した人はよかったという人が多いですが、参加する必要なんてぜんぜんないという人もたくさんいます。自信のない人や、練習の時間がない人にはいいかもしれません。

コースではなくとも、オンラインのコースのようなものもあるようで、こちらは1週間単位で30ポンドとか50ポンドとか払うようです。

ルイは今のところお世話になる予定はないですが、浪人したら来年はお世話になるでしょうね。

そして、一次試験に受かって面接になると、面接の手引きをしてくれるセミナーやコースがあります。これも同じような値段。参加した人は、よかったと言ってましたから、もしかしたら利用するかもしれません。

まあここまでは、うなづけることですが、ちょっとこれはなあと思うのが、ワークエクスペリエンスの受験産業です。

病院やクリニックでワークエクスペリエンスをすることが受験成功には必須と思われているのですが、これが本当に探すのが難しいのです。ルイの場合は幸い水泳関係のコネで何とかいくつか見つけたのですが、コネなしでは無理に近いような状況です。

それで、「海外でワークエクスペリエンスをする」 という受験産業があるのです。インドや東南アジアやアフリカに受験生と連れて行き、現地の病院やクリニックで職業体験をさせるツアーです。もちろんすごくお金はかかります。

近所の娘さんはロンドンの医大に行ったのですが、やはりそうやってタンザニアだかユガンダだかの病院でワークエクスペリエンスしたそうです。

これって、どう考えても不公平ですよね。親が医者など、よっぽどお金があって医者にさせたいと思っていないと、普通は参加できるものではありません。

でも大学側もその辺はわかっているので、海外のワークエクスペリエンスは評価しない大学もあるそうです。それから、病院などでのワークエクスペリエンスよりも、老人ホームなどでのボランティアのほうが高く評価される傾向も強いです。

今はイースタホリデーなんですが、イギリスの試験は初夏なので、今は受験生の天王山です。ルイもまあこつこつやってます。

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6 件のコメント:

foo さんのコメント...

塾的なものは、イギリスにも密かに生息してるようですよ。11+の塾というものが、少なくとも5年前には存在したようです。なぜ5年前かというと、知り合いのお子さんのyear12生が、行ってたからです。

海外での病院研修って、きっと、あの有名なやつですよね。私も昨年聞いて、えーーーっ!っと驚いた口です。すごく高いんですよね、あれ。1週間単位で何周も取れるらしくて、何週間も行く人もいるみたいです。TSRで検索したら、以前話題になっていました。だけど実際、ワークエクスペリエンスの評価されどころって、何をしている場所に行ったかより、自分の経験をいかに解釈できているかなんですよね。発展途上国などの医療を見るのは興味深いとは思いますが、その経験を深く解釈できなければ、受からないですもんね。病院でのシャドーイングができなかった人だって、受かる人は受かるし‥。同様に、ケアホームに長くボランティアに行けばいいっていうものでもなくて、そこでの経験をいかに咀嚼して、理解を深めているかなんですよね。

合格のハウツーだってある程度は存在するんだと思いますが、ハウツーは、"◯◯すれば受かる!"じゃなくて、"◯◯できなきゃ落ちる!"かなーと。だから、"セミナーに行くことが役に立つ"ではなくて、"セミナーを適切に利用するために行く"なんだと思います。

あくあ さんのコメント...

なるほどね。でも、その程度しかないというのがすごいですね。政治的、意図的なのかなぁ?

アジア諸国なんかは受験産業だらけで、お金持ちの子供がよりよい教育を受け、さらにお金持ちになるという構図になってる感じがします。でも、私の友人に、お金持ちじゃない複雑な家庭に育ったけど、すごく優秀という人がいたので、そういう人がきちんと教育を受けられる制度にしておいてほしいですよね。

Atsuko さんのコメント...

fooさん、そういえばロンドンの友達が、息子さんをグラマースクールに入れるのに、必死で教育ママしてました。うちのあたりはそもそもグラマースクールがないから、そんな話はぜんぜん耳に入りませんでしたが、都会では違うのかもしれませんね。

何週間も行く人がいるのですか。サイトによっては、海外でのワークエクスペリエンスも奨励しているサイトもありましたが、病院から送られてきた記事では(BMAなどがだしていたように覚えてます。)、外国人学生が自国でする場合や、自分と関係ある国でない限りは、考慮から除外されるとありました。まさに、こういった受験産業をけん制する書き方でした。

ちなみに2月にルイが行ったセミナーは、4人しか参加者がいなくて、これじゃあ主催者は赤字だろうなあと思いました。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、
アジアの受験産業は、想像するだけで激しそうですね。日本でもたまに、塾も予備校も行かずに、東大や京大に合格する子の話も聞くけど、やっぱりすごく少ないでしょうね。

ヨーロッパはそれでも、平等な教育機会を与えようという政治的意欲はあるけど、アジアはどうなんでしょうね。日本はたまたまほとんどの親が塾にお金を払えるから、なんとなく平等な気がしてるけど、やっぱり行くのが普通と言うのは、おかしいですよ。

foo さんのコメント...

あの海外病院研修、私のブログに来ている方の娘さんが学校から勧められて行かれたように記憶してますその方は、留学生枠での受験ですが、GCSEからイギリス教育ですね。そして、少なくともBMAT校一校からは合格をもらってましたよ。なので、その研修さえも、どう解釈したかが問題であって、必ずしも勘定に入れてもらえないなんてことはないようですよ。

ワークエクスペリエンスのことを直接聞く面接って実は少なくて、面接官の質問に、自分の経験を解釈して織り込んで答えるっていうのが基本です。だから、お金のかかるワークエクスペリエンスでもいいし、近所のGPのボランティアでも良いわけです。ただ、病院でのワークエクスペリエンスがないと、なかなか臨場感のある回答がだせないような質問もあるようなので、やっぱり病院研修をできる人の方が有利なのは、事実ですね。

Atsuko さんのコメント...

fooさん、その私が病院からもらったリーフレットも、本当にどこまで情報が正確かわかりませんからね。ブログ本文に書いた近所の人は、結局そうやって海外でワークエクスペリエンスしてロンドンのI大学に行きました。でもそれも5-6年昔ですから、今はまた違うかもしれませんね。

息子は10月末にノースハンプトンの病院に1週間ワークエクスペリエンスいけることになりましたが、決まったのが遅かったので、残念ながらUCASの申し込みの後になります。PSには書けないけど、面接にはぎりぎり間に合いそうです。そしてもしも浪人したら、来年のPSに書けます・・・。