2016年6月1日水曜日

Lazarus Effect 読書感想

この著者は、イギリス人で今はアメリカの病院で働く著名な蘇生術の専門家のお医者さんです。

病院や設備によりますが、現在では、病院で心臓発作が起こった場合、かなりの確率(何十パーセント)で蘇生することが可能だそうです。そのフロントラインで働くお医者さんなので、臨死体験について 直接患者さん本人から聞く機会があります。

そこで、臨死体験を医者・科学者の立場から検証し、科学的にそのメカニズムを分析したり、幽体離脱現象を(もしくはそれが存在しないことの) 証明しようという試みについての本です。

前半はほぼ「初心者のための医学書」で、死の定義や、蘇生術について詳しく書かれていました。

後半になって、臨死体験について出てきます。臨死体験というものが存在すること自体は、今ではほぼ医学界では受け入れられているようです。ただそれがどういう仕組みで生まれるのか、脳の働きだけで説明できるのか、それとも今の科学では説明できない「魂」的存在があるのかで、意見は分かれます。

思考や意識が脳から発生することは疑問の余地はありませんが、脳内で起きる化学反応がどうやって「思考」となるのかについては、まだ科学的にわかっていないとか。それで、二つの説があるそうです。

ひとつは「意識」は脳で作られるバイプロダクトのようなもの。もうひとつは、「意識」は脳の外にあり、脳はいわばラジオのようにその受信機であるとの説です。二つめの説はいかにもお医者さんが馬鹿にしそうな説ですが、実際にその立場を取るノーベル賞学者もいるそうです。

結論としては、まだ科学的には何も証明することが出来ていません。けれども、どういう仕組みにしろ、「死」が確定した後、少なくとも短時間は、何かしらの意識的活動(臨死体験)が起こっていることは確からしいです。この臨死体験の期間、今の医学では脳波は測定できません。

この長い長い本の最後のページを 著者はこう締めくくっています。

At the very least. today we realize the experience of death does not seem to be unpleasant for the vast majority of people.
(少なくとも 現在、ほとんどの人達にとって、死は苦しい体験ではないようだ。)

For now, though, we can be certain that we humans no longer need to fear death .
(今のところ、人間はもう死を恐れる必要がないと確信していいだろう。)

毎日のように死を扱っているお医者さんにこう断言されると、人生のかなりの重荷が軽くなる気がします。

ではこちらもよろしく
 
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2 件のコメント:

あくあ さんのコメント...

面白そうな本ですね。時間があれば読みたいけど、今は無理なので、アマゾンのほしいものリストにでも入れて保存しておきます。

死ぬことの怖さって、死んだらどうなるんだろう、という怖さなのかな。今までやってきたこと、これからやりたいことが出来なくなる怖さではないのかな?

がんでもう治らないことがわかっている友人に「怖い」って告白されたことがあって、それがずっと頭に残ってるんだけど、それはどっちの意味だったんだろう?

脳の手術を受けるとき、もしかしたら生還できないかもと思いながら全身麻酔を受けたけど、そのときは、ま、なるようになるわ的な感じで、そんな恐怖心はなかったです。

私は魂は続いてると信じてますが、でも死んでしばらくしたら個体としての記憶は消えていくんじゃないかと思います。集合的無意識に溶けていくというか。でも、なんかの拍子に記憶が残っている魂が再び生まれると、前世の記憶を語ったりするのかなと。

死ぬまでわからないんでしょうかね。答えは。

Atsuko さんのコメント...

ここ最近臨死体験に関する本を何冊も読みました。これはアングルが違って面白かった。

そんなふうに告白されたら、頭に残るよね。言葉がなかったことでしょう。知人の97歳のお母さんも、最期はぼけていたんだけど、怖い怖いといいながらなくなったらしいです。

怖いって言うのは、進化論的な本能なんじゃないかな。蛇が怖いとか蜘蛛が怖いというのと同じで。死が怖いと思うほうがサバイバルの確率が高いから、遺伝子として優勢になったという気がするけど。

死後の魂については私も同じように思うけど、エイブラハムは、個別ではありながら集合的意識になるというようなこと言ってたね。要するに、人間には理解できないレベルのことが起こるんだろうなあとは思う。