2010年5月14日金曜日

裏切り者

このわれわれの住んでいる地区にはまずまずの大きさのタウンが三つあります。街(Town) とはいうものの、日本で言えばちょうど市という感じです。われわれの住むタウンはビデフォードといいます。ここよりも大きい北デボンで一番大きいタウンはバーンスタプル。そして一番小さいのがトリントンといいます。地理的にはちょうど正三角形のような感じほぼの等距離です。

バーンスタプルにはバーンスタプルスイミングクラブがあります。そしてうちの子供たちが属するのはトリッジサイドというクラブです。このクラブはビデフォードとトリントンの両方をカバーしていて、トレーニングはビデフォードプールとトリントンプールで行われています。

バーンスタプルクラブはなかなか強いクラブで、全国リーグではわれわれより2ランクぐらいディビジョンが上です。メンバーもたくさんいます。うちのクラブもなかなか優秀な選手はいるのですが、小さいクラブなのでなかなかクラブ対抗では勝てません。

そしてうちのクラブはコーチはみなボランティアなのですが、バーンスタプルにはボランティアコーチのほかにも専属の給料をもらっているコーチがいます。トレーニングプログラムも厳しく、全体的にもっとプロフェッショナルな感じです。

もともとビデフォードとバーンスタプルは水泳に限らずラグビーでもサッカーでもライバル意識が強いので、うちのスイミングクラブもバーンスタプルを宿敵だとみなしています。年に4回、彼らと当たる試合があるのですが、それはとても盛り上がります。

ここまでが前書き。

今週ちょっとショッキングなニュースがありました。ルイたちのチームメートの10歳の男の子がバーンスタプルチームに亡命したんです。彼は優秀な選手で、去年はバタフライでクラブ記録を出しました。リレーではルイと彼とほか2人で、ほぼ無敵の4人組ゴールデンチームだったんです。

試合だけでなく彼らはトレーニングでも仲良く、いつも仲間同士でとっても楽しそうでした。

彼の場合はお父さんは自分自身もトリッジサイドクラブで若いころ泳いでいたので、続けさせたがっていたのですが、お母さんが「将来のためにトリッジサイドでは伸びない」と強引にクラブを移籍させたそうです。でも子供自身は多分移籍したくは無かったと思います。何しろすごく楽しそうでしたから。いってみれば親が強引に進学校の私学に転向させたような感じです。

今日若いヘッドコーチに会ってその話になると、とってもしょげていました。何しろ主力選手が取られてしまいましたから。それに彼女をはじめ、ボランティアで運営されているこのクラブは、誰もお金をもらうことなく、熱心にクラブのために毎週毎週多くの時間を割いてコーチしたり、事務等をしてくれています。そういう人たちにしてみれば、今までの恩を踏みにじられたような感じかもしれません。

でもこれは別に今に始まったことではないんです。うちのクラブで活躍して、ある程度まで行くとバーンスタプルクラブに移籍していく人が1年に一人くらいはいます。

気持ちはわからなくも無いんですよね。この小さいクラブで、自分の年齢グループでいつもいつも1位になれば、もっと大きいチャレンジを望むのは無理からぬこと。もっと強いクラブに移籍して、ますます高いレベルを目指したいと思うのは当然のことです。

でも一方ではクラブの人たちは仲間たちはすごくいい人たちばっかりで仲が良くて楽しそうだし、コーチもその他のボランティアの人たちもすごく一生懸命クラブのために尽くしています。それを裏切るようなこともしたくない。

うちの子供たちは二人とも自分の年齢グループでは一番ですが、まだまだこのクラブでがんばれると思います。今までは週に3回のトレーニングでしたが、最近これを4回に増やしました。水泳は究極的には個人競技ですから、このクラブに籍を置いてもっと上の全国的レベルを目指すことも可能です。でもいつかはバーンスタプルクラブに移籍するということも、絶対無いとは言い切れません。

今回移籍した彼については、しばらくは裏切り者扱いだと思うんですが、仕方はありませんね。でも裏切り者といわれても、今まで良くしてくれたコーチたちに申し訳なくても、自分にとって一番いい選択をしなければいけない時もあります。だから彼のことを責めることはできないですね。

4 件のコメント:

こんの さんのコメント...

「割り切り」ないしは「腹を括る」
というかたちで決断しなければならないことがありますですねぇ
「情」と「義理」のジレンマ
生きて行くには、そういうしがらみを乗り越えなければ進歩しないこともありましょう
「裏切り」というのは、酷のような...気がしますです
いちばんいいというか、納得できる生き方をするには、そういうジレンマを超えていかなければならない時もありましょう

Atsuko さんのコメント...

こんのさん、そうそう、おっしゃるとおりですね。情と義理。日本的な感じですが、世界共通ですね。結局は周りにどう思われようと、自分にとって一番いい決断を下さなければいけないこともありますからなね。
そのへんのところは、周りの人もわかっているとは思うんですが。時間がたてば、感情も落ち着いてくることでしょう。

あくあ さんのコメント...

難しい問題ですねぇ。個人的にはそうやって巣立っていく人を喜んで送りだしてあげられる人でいたいと思ってますが、みんながみんなそうじゃないですもんね。昔、転職していった同僚を裏切り者扱いしている人がいましたが、数年後にその本人も転職していました。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、この話を書きながら、あくあさんの転職のことも考えました。義理になった人、世話になった人に申し訳なくても、やっぱり自分に一番いい方向に向かっていくしかないでしょう。
そう思うと昨日の離婚の話とかも、そうなるのかもしれませんね。ほんと、喜んでとはいかないまでも、個人の決断を尊重してあげるしかないですね。