このグレンフェル・タワーはカウンシル・フラット、つまり公団住宅でした。家賃も民間の家より安く、入居に関する収入の審査もないのだと思います。入居希望者は多く、母子家庭とか、病気や障害で働けないなどの人が優先になりますから、住民は低所得者層、そして非白人層が多いです。
これを管理する自治体はチェルシー&ケンジントンという、ロンドンで一番リッチな地区になります。ハロッズのあるナイツブリッジとか、自然児博物館やビクトリア&アルバート美術館のある場所で、日本人でもなじみのある地域です。でもそんな地域でもやっぱり貧困な地域というのはあり、この高層住宅はその一角に立っていました。
グレンフェル・タワーはそういう貧困層というか、いろんな人種の入り混じった下町っぽい住居だったようです。
今回の火事の原因なんですが、私の超個人的な、素人目の分析は以下の通りです。
1.クラディング
2.緊縮財政
3.イギリスの根強い階級社会。
クラディングについては昨日書きました。まだヒヤリングの結論は出ていないんですが、まずこれが一番の原因であることは間違いなさそうです。 そしてこれからの一番の焦点は、一体だれの責任で、このような防災基準に反した工事が行われたかになります。
2番目。イギリスではリーマンショックの後から保守党政府による緊縮財政が続いています。イギリスは昔から福祉国家といわれていますが、福祉でぬくぬくというわけでは全くないけど、それでも弱者を社会が守るという精神はシステム化されていました。それが緊縮財政となり、一番しわ寄せが来たのが福祉でした。
政府だけでなく地方自治体も財政難ですから、自治体が運営する公団住宅の管理の予算も厳しくなり、外観の改築が必要になった古い高層住宅には、安いクラディングの工事が施行されました。
そして3番目のポイントは階級社会。グレンフェル・タワーの住民委員会では、火災に関する懸念は今まで何度も議題にあげられていました。しかしそれを自治体がまともに取り上げることも対処することも行われませんでした。
堂々と表立った差別はありませんが、移民層、貧困層の住民委員会の声が上に届かないという構図は、イギリスの階級社会の現れといえると思います。もしもこれが裕福層の委員会であれば、その中に弁護士だとか議員だとか影響力を持つメンバーがいて、とんとんと話が進んでいくというのが、残念ながらイギリスのコネ社会(ということをここ数年実感するようになりました。)のように感じます。
このヒアリング、そして裁判はこれから相当時間がかかると思いますが、今までに明らかになった情報では、そのうち誰かが有罪になってもおかしくないんじゃないかな。
でも、個人が有罪になってそれでおしまいって問題じゃありません。なにか構造的なイギリス社会の歪みがこの惨事につながったように私は思います。
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