2009年10月16日金曜日

あつこの呪い

うちの近所に1年くらい前に70歳前後の夫婦が引越ししてきました。


うちの家というのは元農家を改造したもので、そのFord Farmというところに3軒の家が建ってます。一軒が元ファームハウスでうちともう一軒が元牛舎と搾乳所。この3軒の家に来るには、道路からわれわれ3軒で所有している私道(ドライブ)を通って来ます。このドライブと道路の角に家が建っているのですが、その家にこの夫婦は越して来ました。


彼らの家は正面が道路に面していて、横がこのドライブに面しているのですが、彼らがこのドライブを使えないように彼らの家とドライブの間には幅1メートル、長さ5メートルくらいの草地があります。(ドライブの使用者が増えると、法律で道路整備の規制が厳しくなるため。)


この草地がややこしいことに、誰にも属していないんです。ほんの5㎡の土地とはいえ、放っておくと雑草だらけになるので、時々誰かが草を刈ります。それで今までは問題がなかったのだけれど、この人たちが越してきてから、彼らは草を刈る以上のこと、花を植えたりといった手入れをはじめたんです。まあきれいになるのは良いんだけど、イギリスには誰にも属さない土地を何年も手入れすると自分のものに出来るという法律があるので、これはちょっと私たちの間で、まずいかなあという雰囲気を作りました。それでこの夏はデイブがわざと何回か芝を刈ったのですが、そのたびにそのだんなさんが出てきて、「何をしているのか」と聞きます。別にけんか腰というわけでもないのですが、私たちとしてはちょっと気になります。


うちは土地が2500坪くらいあるし、本当にこんな土地自体はどうでも良いんですが、この人たちのものになると、そこに建物を建てられたりしたら、ドライブの入り口が狭くなって、大きいトラックやトラクターが入れなくなって困るんです。それに道路整備の法律が適用されると、私道とはいえきちんと整備をしなければいけなくなります。


でも実は私はこの奥さんとはちょっと仲が良いんです。というのは彼女は時々村でやっているヨガのクラスに来てくれる生徒さんなんです。なのでちょくちょく世間話もします。彼女はとても感じの良い人なんですが、だんなさんはその逆。いつもむっとしていて、挨拶もろくにしない。おまけにこの草地の問題があるので、この人引越しして早々、隣近所を敵に回したいのかしら、変な人と思ってました。


問題はそれだけではないんです。彼らはとっても大きいキャンパー・バン(キャラバンというホリデー用の簡易住宅が車になったもの、写真載せときました)を所有しているのですが、これをうちのドライブと道路の角に止めているんです。私たちはちょっと道に出るときに見通しが悪いかなあというくらいなので、別に問題はないのですが、彼らの向かいの家に住んでいる人は、見通しが悪くて事故になりかけたとの事。それで苦情が出ました。


それにこのキャンパー・バン、新しくてぴかぴかなんだけど、やっぱりこののどかな田園風景を損ねるとの苦情も出ています。うちからは見えないから気にならないんだけど。


このだんなさん、本当引越しして1年にもならないのに、ずいぶん敵を作ったもんだなあと思ってました。


今日ヨガを教えに行くと、その奥さんが来てました。彼女が最後に来たのは6月か7月です。それでちょっと世間話になり、どうしていたの旅行に行っていたの?というようなことを話していると、「ロイ(だんなさん)の記憶力はまだよくないんだけど、まあ二人合わせれば何とかやっていけるわ。」と彼女が軽く言いました。


ああ、それでそうなのか。そういえば、病院にロイを連れて行くというようなことを何度か聞きました。でもあのくらいの歳になると時々病院に行くなんて普通のこと出し、気にもしてなかったのですが、何かの病気だったのか。それでなんとなくつじつまが合います。確かに記憶が怪しくなるような病気になれば、ちょっと人に対してアンフレンドリーな態度や、きつい言い方をしてしまうのもわかります。近所に対しても、反感を買うようなこともしてしまうのかもしれません。そんな風に内心心細いと、外側に向けては逆に横柄な態度やとるということも考えられます。


その話を今晩デイブにすると、彼もそういえば、といいました。つい最近彼ら夫妻が車で帰ってくるのを見たのですが、奥さんが運転していたとのこと。そういうのは私たちの年代ではそんなに珍しくないけど、あの世代の夫婦って大体だんなさんが運転するので、デイブはちょっとへんだなあと思ったそうです。そして彼女はデイブを見て手を振ったけど、彼は知らん顔だったとか。


人間ってすぐ目の間に起こったことを見て人を判断するけど、その人たちの事情ってわかりませんからね。別に私たちは彼と衝突したわけじゃないけど、ちょっと内心不愉快には思ってはいたので、これからはもうちょっと心に余裕を持とうと思いました。人それぞれいろいろ事情があるから、早まって判断してはだめですね。


ところでフォードファームにある元ファームハウスには5年位前まで、60歳くらいの夫婦が住んでしました。そのだんなさんのほうが家の裏の小屋で家具を作るビジネスをはじめ、そのためトラックや資材の出入りが多くなり、その上近所に断りもなくうちの前に大きい小屋を建て、ちょっと問題になりました。


これはこのまま行くと弁護士に入ってもらうことになるかなあと思ったころ、彼はある日急にその小屋で心臓発作で亡くなりました。その奥さんもあとを追うように半年後に亡くなって、今は別の家族が住んでいます。


はじめに書いた夫婦といい、このファームハウスの夫婦といい、私とちょっとでも家のことでもめる人には、よくないことがおこるんです。別に呪ったわけでもないのに。


呪わないのにはわけがあります。


今の家を買う前に家探しをしていたころ、何軒も見た挙句、これは良いと思い入札した家がありました。でもそのころまだわたしのロンドンのフラットが売れてなかったので実際にお金を払うことが出来ず、そのままフラットが売れるまで保留になったということがありました。


その同じとき、デイブの友達夫婦も家を探していました。それでたまたま偶然彼らもこの家を見て気に入り、それとは知らず入札しました。その額は同じくらいだったのですが、彼らには売らなければいけない物件がなかったので、結局彼らがその家を手に入れました。


そのことを後で知り、わたしは冗談で、

「別に良いもん。あの家に住む人は不幸になるんだから。」と宣言しました。


すると本当にそうなったんです。まず引っ越し早々、洗濯機と掃除機が壊れ、その数日後に彼女が夜中に階段を一番上から一番下まで落ち、怪我をしました。骨折はしなかったけど、会うとかなりひどいあざやら掻き傷がたくさん出て、包帯をたくさん巻いていました。「もう引越ししたとたんに悪いことばかりおきて、どうなってるのかしら。」と彼女はこぼしていました。


こわー。彼女たちはわたしが言ったこと知りません。もうこうなったら冗談でも、知られたらまずいですよ。そのときわたしはすぐにもちろん心の中で「もうあの呪いは無し!!」と宣言しました。


そのしばらくあとに、だんなさんのほうはお父さんがなくなり、そのまたあとにお母さんが亡くなりました。それで入ってきた遺産でその家を改築して大きくして、彼らはそれを売ってポルトガルに移住しました。これは良いことなのか、悪いことなのか。もう私ののろいとは関係ないと思うんだけど。


あの家にそのあと入った人はどうしているかなあ。幸せに生きていてくれれば良いんですが。


どちらにしても、私と家のことでもめると、怖いですよ。命に関わっちゃうかもしれませんよ。


7 件のコメント:

こんの さんのコメント...

あつこさん にはわるいのですが...拝読した後に、思わず笑ってしまいました
「あつこの呪い」ですかぁ
ふ~むむむ こわぁ~い
マジにそう思われてるのか? それとも、面白いブログにしようと... そう考え、そう思うから書かれたのでしょうねぇ
偶然とかいうものを考えると、そういう必然のようなのを導きだすわけでしょうなぁ
そういう世界(五次元?)があるのかも知れませんですね
そういう世界が分かる(見える)人がいるということでしょうか...

本読みと山歩き さんのコメント...

「鬼門」を思い出しますね。
風水で北東は鬼門とよばれ、神々の通り道です。鬼も通るわけです。
その地は常に清浄に心がけ。。。
京都における延暦寺はその典型です。
 思うに、周りがそう思うと自分もそう思う自分が思うと、無意識の内に思考や行動に微妙に影響を与える。
悪く思えば悪い方向に、良く思えば良い方向に。
呪術や迷信もそうじゃないのかな~と思うわけです。
呪いもほどほどにせねば、無意識にその人へ影響していますよ。
あつこさんの目でじっと見られると、なにかを感じるし。(笑 ああ怖い、)

こんの さんのコメント...

「ドライブと道路の角に家」の話
とてもよく分かるし、正直面白いです
特に、旦那さんの態度 なぜそんな態度(性格)なのかがとてもよく理解できますね
余裕がなく、防衛的な性格が前面に出てくるのですよね
その人のワケが分かると、ね こちら側の接し方にも余裕がでてきますから面白いです

「呪い殺し」の話が、よく時代劇に出てきますが、人を殺すには刃物がいらないのですから怖いなぁ

あくあ さんのコメント...

あつこだと、ほんとにそんな力がありそうだから怖いね。

それはそれとして、イギリスのご近所話はやっぱりイギリスっていうか西洋の田舎の香りが漂ってますね。日本のご近所話とは何故だか違っているように感じて面白かったです。

それにしても、近所のことでもなんでも、日本語だから関係者に見られる心配をしないで書けちゃうのっていいですね。私は誰がみてるか分からないから、書ける内容がある程度限られちゃうのよねぇ。うらやましい。

Atsuko さんのコメント...

こんのさん、別に呪ったつもりはなくて、冗談で言ったんですけど、そのとおりになって自分でも怖くなりました。うかつにこんなこといってはいけないですね。

Atsuko さんのコメント...

山歩きさん、呪いだけではなくて、何を願うかも気をつけたいですね。

仕事であまりに忙しすぎて休みもとれず、「もう病欠でも良いから休みたい」と思ったとたんに、交通事故に遭った人の話とか、すごく幸運な目に遭って、「信じられない信じられない」といい続けていたら、その逆のことが起こったとか聞いたことがあります。

この目でじっと山歩きさんを見たのはずいぶん昔だと思うんですが、それをまだ覚えているとは、私の眼力ってそんなに強い・怖いのかしら?

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、そんな力ありそうかなあ。普段は気をつけて、人のことを悪く思わないようにしてるんですが、いったん思うと・・・。というのは冗談です。嫌なことはすぐ忘れるので、人を恨んだりはしない性格ですね。

そういわれてみれば、私のブログに出てくる人でこれを読む人はいないから、近所の人だけでなく子供のことや、そしてデイブのことなど、いくらでもかける。ほっほっほ。

でもあくあさんでも、近所の人は読まないでしょ?会社の人というのもすごくまずいけど。