わたしは大学を出るまで日本で育ってますから、戦争は悪いもんだと思って育ちました。広島も行ったしひめゆりの塔の話も読んだし、まあ普通の反戦派です。イギリスでも湾岸戦争反対のデモにも行きました。
でも最近、戦争って全体的に見れば国家の争いに罪のない市民や子供が巻き込まれる悲惨なものですが、個人レベルではまた別のものではないかと思うようになりました。これは特に戦争に行く人にとっての個人的体験としては、ということです。
アメリカ人のあるひとの話なんですが、彼女は今70歳くらいだと思うんですが、彼女のお父さんが亡くなる数年前に自伝を書いたそうです。彼女には彼女も含め4人の姉妹がいます。それでその自伝を手にとって、自分たち娘のことがどんな風に書いてあるか読んでみると、そのことについてはほんの数ページしかない。書いてあることの大半は戦争のことなんです。自分が兵士としていった戦争です。それで彼女はがっかりしたことはしたんですが、兵士としての戦争体験が彼にとってどんなに大きいものであったかを知ったということです。
そういわれて考えて見れば、実際に軍隊に入って訓練を受け、前線に出て戦争体験をすれば、そして文字通り命がけで毎日を過ごし、そこを生き残り、周りで人が死んでいくという強烈な体験をすれば、そのあとの人生が色あせて見えるのもなんとなくうなづけます。そういったところで、自分は生きているんだという強烈な印象を一度受ければ、そのあとの生活は余生のような、生ぬるいものになるのでしょうか。
実はこの女性というのはアブラハムの教えをチャネルしているエスター・ヒックスです。ちなみに誤解のない様に書いておくと、アブラハムは戦争が悪いとも良いともいいません。結婚も離婚も犯罪も菜食主義も不倫も薬物中毒も、アブラハムは完全に中立で一切批判しません。そういう物の見方をする人(?)って一度も出会ったことがありませんでした。キリストですら善悪で人を判断します。
話がそれました。それからアカデミー賞を数年前もらったか逃したかしたコールド・マウンテンという映画を見たときのことです。ジュード・ローとニコール・キッドマン主演でした。
これはアメリカの南北戦争が背景なんですが、舞台は教会が人々を完全に支配している田舎の村です。人々は田畑を耕しながら、教会や権威者の教えを疑うことなく暮らしています。そこで南北戦争が勃発すると、村の若者は喜び勇んで戦争に行くんです。はじめはわたしは、どうしてこんなに狂喜してまで戦争に行くんだろうと思っていたんですが、一緒に見ていたデイブに指摘されてわかりました。
彼らはこんなやせた土地にしがみつくように生活し、自分の親が貧乏でいつも不機嫌で妻や子供を怒鳴りつけたり殴ったりしているのを見て育っています。自分も村の誰かと結婚し、同じように身を粉にして畑を耕す以外将来はなく、何の機会も娯楽も、おそらく教育もない環境です。そんなところにいれば戦争に行って村を離れ新しい土地に行き、兵隊として訓練を受けて悪い敵と戦えるというのは、現状打破という意味ではまたとない機会に見えるのではないでしょうか。
映画の中盤以降はもちろん戦争の現実が出てきます。それで主人公は軍隊を逃げて脱走兵になるのですが、それを執拗にどこまでも追い詰められ、最後に恋人と再会した翌朝に射殺されるという話です。(あらら、まだ見てない人、ごめん。)だからまあ、反戦がテーマというわけではありませんが、戦争の悲惨さと狂気がよく描かれています。
アメリカって今では徴兵制ではなくなって志願制ですが、ちらりと耳に入ってくる話では、今もそれほど変わらないのかなあと思います。つまらない小さな町に生まれ育って、勉強も嫌いで学校も落ちこぼれ、安い給料のつまらない仕事しかありつけず、楽しみといえば酒とタバコと週末ごとに違う女を誘って寝るだけ。将来のあても街から出て行く当てもない。そういう若者にとって、志願して軍隊に入るというのは、新しい人生を切り開く良いチャンスなんじゃないでしょうか。
これはアブラハムがいっていたことですが、戦争に行く(兵隊に志願する)人たちは、別に正義のために戦おうとか、愛国心のためだけにしているわけではないとのことです。今まで自分が生きてきた人生から出た結論として、個人的な理由で戦争に志願するんです。平和な世界で一生これといって良いことも悪いこともなくぬるま湯の中で生きることよりも、軍隊や戦争といった極端な環境で、強烈に命をかけて生きたいという人もいるんです。それは個人的なチョイスなんです。まあそんなことに巻き込まれる市民はたまったものじゃないともいえますが、戦争を仕掛けてるのは兵隊ではありませんから、彼らはただ目の前にある機会をつかんだだけに過ぎません。
イギリスの場合も志願制です。イギリスは実は軍隊は社会的地位が高いので(アンドリュー王子も昔空軍にいたし、今はハリー王子が陸軍にいます。)アメリカとは事情がちょっと違うかもしれませんが、ランクの下の兵隊のレベルでは同じなんじゃないかなあ。日本の自衛隊って言うのはどうなんでしょうか。昔は運転免許が欲しくて入隊するという話も聞きましたが、そうなのかなあ。
政治家のレベルでは、戦争をする理由は政治的野心以外、何もないと思いますよ。ブレア首相もブッシュ大統領も、イギリスを(アメリカを)勝利に導いた偉大なリーダーとして歴史に名をのここしたかったんだとわたしは断言します。でも今は昔のように大衆は簡単に洗脳されないし、情報も昔のように簡単にコントロールできなくなったから、そんなにうまくは行きませんでしたけどね。
個人的にはわたしも反戦派ですが。政治家憎んで兵士憎まず。
6 件のコメント:
チャップリンの独裁者でしたっけ。
「一人を殺せば殺人者だか、一万人を殺せは英雄だ」という有名な台詞。
まさに、政治家がなぜ戦争を起こすのかを皮肉った言葉ですよね。
個人としての戦争の見方、なかなかおもしろいです。
命を懸けた戦いは、まちがいなくその人の人生を変えるなにかになるでしょうね。
それが戦争が良いのか、仕事か、遊びの何かか、いやいや戦争が一番インパクトがあるでしょう。
戦争は手段で、なにか“命を懸けてやる”ものが見つかれば、きっとその人の人生は変わるのでしょうね。
さて、振り返って、自分はどうだと思うに、どうでしょう。
その前に今の人生を変える必要があるのかという疑問にたどり着きます。
さてさて、この難問、また眠れなくなりそう。
山歩きさん、わたしが書きたかったことが伝わったようで、嬉しいです。そう、戦争の是非ではなく、個人の生き方のことです。
戦争以外に、戦争以上に、命をかけられるものが自分にはあるのか。生き生きと、生きているんだと実感できるものがあるのか。イエスと答えられる人は幸せですね。それを戦争に求める人もいるのでしょう。
でも実際には、イギリスでは軍隊に入っても実際に前線に行くことはあまりないので、それほど深く考えて志願する人ばかりでもないのかもしれません。特に空軍なんて、かっこいいイメージが強いですから。
個人の生き方が「戦争」に依所して変わる
うう な、なんとも殺伐としたモチベーションなことか...
殺される側の人々の気持ちがちっとも斟酌されていない怖さ
殺される理由もなく、戦争で死んでく人々
その中に自分の子どもたちがいるとしたら... それでも戦争を意義づけますですか???
うう 私も眠れなくなってきました
こんのさん、そりゃあもちろん戦争はよくないですよね。それはまさに正論ですね。
シンガポールは男子全員強制徴兵だそうです。18歳って言ったかな、その辺りから数年間強制的に軍に入り、その後、サラリーマンになっても、毎年3週間程度、ナショナルサービスということで、訓練のリフレッシュに行かされるんだそうです。その期間の分、国がその人の勤める会社に給料見合い分を払ってくれるんですって。
シンガポールの同僚が11月は3週間いないというので聞いてみたらそういう話でした。
なんというか、まだまだ戦争って普通に人間界に存在してるんだなって・・・。日本にいると、もうよその世界のことのようですからねぇ。
ヨーロッパではつい最近フランスでもスペインでも徴兵制度がなくなったばかりだし、イタリアも今なくなるとかなくならないとかの最中です。こうして思うと、イギリスでは志願して軍隊に入ってくれる若者がいるので、行きたくもない人が徴兵されなくて済むのですから、ありがたいといえばありがたい。
日本にいると世界は平和なような気がしますが、中東にも東欧にも近いヨーロッパでは、なかなか世界紛争はなくならないなあという気がしますね。第2次世界大戦以降イギリスは3度も戦争しているし、いまだにイラクとアフガンには兵士を送っていて、毎週のように殉死のニュースがあります。
ロンドンにいた頃は北アイルランドの紛争でシティーはしょっちゅう爆破されていて、バルト証券取引所のビルがぶっ飛ばされたときは、見に行くとその一体はニュースで見るベイルートか何かのようでした。数年前のロンドンのバスの爆破で何十人も死んだときも、あれ、前住んでいたフラットから100メートルくらいの場所だったんですよね。
でもイギリス人も日本人と同じように普段はのほほんと暮らしています。イギリス人ってタフだなあと思うことが多いです。
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