2010年1月26日火曜日

イラク調査会

2003年3月に始まったイラク戦争といえば、日本にいる人たちは、ああもう終わった戦争のことかと思うでしょう。でも実はこの戦争はまだ完全に終結したわけではありません。まだ英国軍がイラクにいるし、戦死者もコンスタントに増えています。(もっとも最近はアフガンに駐在している兵隊の戦死が多いようですが。)

このイラク戦争が国際法において違法なんじゃないかという世論は戦争前からかなり強くあり、最近になってこの違法性を調べる調査会が出来て、毎日のように証人を読んで調査しています。証人といえばそのころの大臣や官僚たちです。

それでここ数日は外務省の法律アドバイスチームの法律家たちが呼ばれています。今日は開戦後に辞職した女性法律家の番でした。

彼女が今日それはそれは大きな爆弾を落としたんです。法務省の法律家は全員一致で、国連の2番目の承認なしで開戦するのは国際法違反だと政府にアドバイスしたのに、政府はそれを無視して戦争を始めたということです。

昨日は彼女の上司に当たる人が呼ばれて、このほぼ同じ証言をしていました。

私はあまりテレビを見ないし、ニュースも見ないのでフォローしているわけではないのですが、ネットのニュースで見るとこんな感じでした。まだそのころの総理大臣のトニー・ブレアは証人には呼ばれていないのですが、そのうち呼ばれることでしょう。

国際法って国の法律と違って、破ったからって罰則があるわけでもないし、解釈次第だと言う声も多いんですが、本当に違法だったという結果になったら一体どうなるんでしょうね?

それにしてももう終わったことといえば終わったことを、こうしてうやむやにしないでこういういう調査会がもたれるというのは、大変なことです。しかも別に政権が変わったわけでもなくて、同じ労働党がまだ政府にいるというのに、ちゃんと国のお金で国のシステムでこういうことが行われています。これって本当に三権分立がしっかり機能してるなあって思います。

日本も最近政党が変わりましたが、昔のままの自民党が政権を握り続けていたら、こんな風に自分たちの政権に不利になるような調査委員会を設立させるなんてことはありえないような気がします。

ここまで書いて、一体誰の主導権でこの調査会が設置されたのか気になって調べたら、これはなんと現総理大臣のブラウン首相でした。彼はそのころはブレア政権の大蔵大臣でした。内閣内では、総選挙が予定されている今年にこの調査会をするのは自殺行為だとの意見もあったみたいです。

うーん。やっぱり政治、というよりは民主主義に関してはイギリスは先進国ですね。いつもはブレア元首相に比べるとカリズマがないと思われているブラウン首相ですが、彼もなかなか筋が通った立派な人です。イギリスの政治家って、政党間の対立は醜いんだけど、個人レベルではモラルが高い人が大半で、日本とは違う気がします。

もちろん日本にも立派な政治家はいるんだろうけど、私が子供のころはロッキード事件とか田中角栄の逮捕などで、政治は汚いもんだという意識で育ってるんです。だから私は日本にいたらすごくノンポリか左翼に染まっていたかも。

このニュースについて、現野党の保守党の元防衛大臣がコメントしていました。もちろんそのときのブレア内閣を批判しているのですが、それが本当に嬉しくて嬉しくてたまらないのが隠せないでいました。労働党の不法性が浮上してきて、ラッキーラッキーって感じです。こういう政党対政党の対決が子供っぽくって汚くて、それがイギリスの政治の玉にキズです。これがあるからニュース見なくなったんだよね。

6 件のコメント:

こんの さんのコメント...

「喉もと過ぎれば...」あとは「野となれ山となれ」みたいなところがある日本
民主主義の先進国は、やはり違いますですねぇ

小泉から安倍・福田と変わって、さらに政権交代なって、アフガンへの対応はまだ語られてもイラクは歴史的な出来事みたいになってる

「温故知新」がないと、やはりダメですねぇ
過去をちゃんと知って(検証し)おくべきです。歴史をだいじにしないとねぇ

Atsuko さんのコメント...

こんのさん、確かに日本は全体的に記憶が短いというか、すぐに忘れる国のような気がします。参戦しなかった日本にとってはそりゃあイラクは歴史的出来事でしょう。

イギリスはこんな風に自分の膿を出すようなこと、いったんはじめたら出し切るまで続けるような気がします。日本はその点、お偉いさんが絡むとこういうことはうやむやにされ、臭いものにはふたされるような気がしますがどうでしょうか。

こんの さんのコメント...

「長いものには巻かれろ」的なところが、やはりつよいですねぇ
沖縄の基地問題にしても、地域住民の意向よりも先に「国で決めたことだから」と諦めが先にでてしまう
はたして、今度の普天間のそれはどうなるやら...
臭い(難問)ものに蓋 ではなく、やはりちゃんと避けずに打開して進みたいものですなぁ
そうでないといつまで経っても民主主義は実現しないですよねぇ

Atsuko さんのコメント...

こんのさん、長いものには巻かれろ、そうそうそれです。

でも日本を長くはなれて、まだまだそういう考えは残ってはいますが、外から見る限りではだんだんそんなしきたりや古い考えに疑問の声をあげる人も増えてきたような気がします。

なかなか民主主義でも男女平等でも、すぐには進歩しませんが、変わって来ていると思いたいですね。

あくあ さんのコメント...

ふーんイギリスってそんな感じなんですね。アメリカの政治に関してはニュースが多くても、イギリスに関してのニュースって日本にいると少ないから、あんまりよく分かりませんでした。

日本については、ゆっくりとは言え変わってきてますよ。こんのさんが社会が変わるのには100年かかるという言葉を引用されていましたが、やっぱり世代が入れ替わるまで変わらないってことなんでしょうね。私たちがこの世からいなくなる頃には随分と変わってることでしょう。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、でもイギリスの総理大臣の名前くらいは皆知ってるかな。サッチャーさんのころは知っていましたが。

「出る杭は打たれる」「長いものには巻かれろ」そんな文化が嫌で日本を出た様なものですが、この私でもそろそろいつかは帰っても良いかなと思うくらい、変化しつつある感じがします。あくあさんもそう思いますか。

ゲイ差別の話で、アブラハムも、人が死んでいって世代が変わらないと変わらないといってました。だから徐々にしか変わらないんでしょうね。でもウーマンリブの60年代の半ばに生まれた私たちの世代は、エキサイティングな時代と感謝してます、ほんと。押され気味の男性がかわいそうなくらい。