2009年11月7日土曜日

読書感想文、芥川賞

この夏に芥川賞を受賞した磯崎憲一郎氏の終の住処という小説を読みました。夏に日本に行ったときに、これの掲載された文芸春秋をいただいたからです。

なんか感想の書きにくい話でした。あらすじは主人公が30歳を過ぎで恋愛結婚するが、どちらももうそろそろ結婚するべきだろうという、もともとからあきらめのような気持ちでの結婚。新婚旅行から奥さんの機嫌は悪く、その機嫌はいつまでも直らない。仕事は安い給料で上司に怒鳴り散らされる毎日。ひょんなことから社内の女性と不倫関係になり、離婚しようと思ったところに娘が出来てしまう。

その後月日は経ち、娘は無事に成長。仕事も起動に乗り出し出世街道へ。だが妻との関係は変わらず、ある日を境に11年間も口をきかなかったが、それもまたある日を境に理由もなく話すようになる。その間8人の女性と関係を持つ。妻が口を利くようになって家を建てる。仕事でアメリカに飛ばされ、やっと合併の話をまとめて2年ぶりに日本に戻ってくると、娘は家を出ていた。また妻と二人の生活が始まる。

これだけです。

文体や印象はぜんぜん違いますが、結構村上春樹的な、非現実的なことが起こります。池の水を操る老人や、毎日続く満月。それから老建築家の不思議な振る舞い。でもこういったことが淡々と起こる。

主人公は常に受身です、結婚も流れのまま、その後の恋愛関係も、これといった盛り上がりはない。人間らしい感情があまり描かれていず、描かれていてもそれがまるで第三者のことのように、感情がこもっていない。でもそれはそれで、その感情が欠けている所が欠点かというとそういうことではなく、感情が本題にとって不要なので簡単に書かれていると言う感じがします。

感想は、「良くわからない」です。でもこういう人生ってよくありそうだし、それって寒々しいなという感じがします。

最近の芥川賞受賞作は、同じ知人が日本から送ってくれたので、去年受賞した楊逸氏の「朝が滲む朝」と、その前の川上未映子氏の「乳と卵」を読みました。

「朝が・・・」のほうは、中国人が日本語で書いて受賞した作品だと言うことで話題でした。話しは、細かいことは忘れたのではしょると、中国で生まれ育った主人公が苦労して良い大学に入り、一生懸命勉強するが、1990年ごろの天安門広場の民主化運動に影響を受け学生運動に参加し、問題を起こし退学になる。その後日本に移住し、その後の主人公とその友人の生活が描かれていると言う話でした。

前半は面白かったけど、後半ははしょった感じで、尻つぼみだなあという感じがしました。

それから「乳と卵」。これはよかった。東京に住む主人公のところに、母子家庭で暮らす姉とその娘が泊まりに来る。中学生の娘はもう何年も母親と口を利いていない。母親は水商売をしているが、どういうわけかこの年になって豊胸手術を受けることに取り憑かれている。その数日の話です。

これはすごくよかった。泣けました。主人公からの観点のほかに、娘からの観点も書かれている。どういうわけで母親と口を利かなくなったか。それから母親が中年を迎え、常道から少しずつずれた精神状態になりつつあるのがなんとなくわかる。その母親を娘はすごく心配しているんだけど、それでも口はきかない。だから二人の間には関係が存在しない。

それがある些細なことをきっかけに爆発し、卵を投げ合うことになる。そういう話です。登場人物3人のどの立場もよく描かれていて、心に響きました。

それにしても審査員の石原慎太郎、この人絶対良いことを言わない。褒めない。そういう人いますよね。そういう人は避けたいですね。アブラハムの言うとおり、悪いことばかり目の行くような人には、あまり近づかないほうが良いですよ。

ところで審査員と言えば今日は1週間待ちに待ったXファクターの日。今残ってるのは8人です。ジョンとエドワードはゴーストバスターズを歌って踊りました。すごくよかったよ。せりふもあって楽しいショーでした。第2週目に真っ赤なスーツで歌ったOoops, I did it again (これは多分ゲイ社会で伝説化すると思う)の次に一番良いパフォーマンスだったと思いました。お楽しみください。

http://www.youtube.com/watch?v=FAE7pxmeXCs

審査員1ダニー・ミノーク(カーリー・ミノークと姉妹)は、「これは歌のコンテストなんだから、なんといってよいものか。ラジオでは聞けない。」とけなしていました。審査員2のシェリルは、「すごく楽しかった。3歳から10歳くらいまでの子供たちは、皆あなたたちに夢中だわ。」と、ちょっととげのある褒め言葉。そして今回はなんと今までの天敵のサイモンが「まあ、面白かった。子供には受けるだろう。よくやった。」と今までにない最大限の褒め言葉(?)を言っていました。

いつも彼らの見方のルイ・ウォルシュは「どこに行っても誰もが君たちの事を話題にしている。暗く世知辛い世の中で、君たちは聴衆を楽しませてくれる。ショービジネスとはそういうものだ。」

会場の観客は大声援組とブーイングに分かれています。彼らが出てくる前から紹介されただけでビブーイング。でもこれを聞くと、家でテレビを見ているファンたちは、「よし、何度も電話投票して今週も救ってやるぞ」という気になります。

司会者までが「こんなにブーイングされたり、審査員や新聞やネットでひどいことを書かれても、どうしてそんなにいつもニコニコしていられるの?」と聞いていました。「僕らはただ毎週こうしてステージに上がってパフォーマンスできるだけで楽しいんだ。」というような答えでした。偉い!そうそう、だから投票しようという気になるんですよね。

今週もすごいジョンエドマニアで(イギリスでは最近はJedwardと呼ばれてます。)、新聞も特集に次ぐ特集、ブラウン総理大臣もコメントしてました。それがまたよくないコメントで、「だからあいつは大衆の気持ちがわかんないんだよ。」といわれていました。

6 件のコメント:

本読みと山歩き さんのコメント...

芥川賞は“純文学”でしたよね。
そのせいか、あまり純文学には縁遠い私には、内容が難しすぎるのか、あまり読んでいません。
純文学というと、大衆文学と違って、自分の感性にあわないと“まったくおおしろくない”とういうあつこさんがいうような事態に陥りそうで。
「乳と卵」が面白いのですか?一度読んでみようかな~。
短編が多いらしいし。
受賞作の履歴をみてみると、森敦さんの「月山」というやつがありました。山関係なので(笑)こっちからはいってみようかな。

なかなか海外では本の購入もままならず。
ブリュッセルには日本書籍の小さな本屋さんが一件だけ、昨日もデュッセルドルフのちょっと大きめのお店にいって、一冊買い求めました。文庫ですら値段が倍以上しますもんね。日本書籍購入で苦労していません?
あつこさんなら、日本語の本はあまり読まないかもしれませんが。

Atsuko さんのコメント...

山歩きさん、会社を通して買うことは出来ないのですか?ロンドンの銀行にいたときは、派遣員の人は月に何冊か会社を通して買えていました。それで私などの現地採用は、時々枠があまってるときは親切な人が注文してくれていました。ロンドンの本屋で買うと、驚く度高かったです。それで私は日本に行ったときに1年分まとめて買っていました。

今はアマゾンがありますけど、日本のサイトで買ったことはないんですけど、どうなんでしょう?先日読まれていた狼の本など、どこで入手したんですか?

デュッルドルフと言えばドイツ。そんなに簡単に毎週国境を越えているのですか?

本読みと山歩き さんのコメント...

会社の補助はありますが、すずめの涙で家族が月刊誌なので使ってしまいます。
それも、アマゾンのようなネットで、自腹で買うとやっぱり倍以上はします。
 先回の狼の本などは、夏帰国時に数冊購入したものの内の一つ。
その時その時に読みたい本が変わるので、まとめ買いができないんです。
 毎週毎週、国境越えといっても、西も東も南も1時間ほどでベルギーを出てしまいます。九州より小さいのですから。
 ちなみにデュッセルドルフまでは2時間、旨いラーメンと本の購入を目的によくいきます。
パリまで車で3時間、こっちの本屋はもっとでかい、ジュンク堂、でも本目的だけで行ったことはありません。
 はやく日本語ばなれしなくては、金がかかって仕方が無い。

あくあ さんのコメント...

CNNでジョンエドが優勝したって言ってたけれどそうなんですか?日本語訳のついてるCNNだったので、ちょっと怪しい・・・。だって結果が出るの、日曜では?

私もちょうど文芸春秋を手にしたときに芥川賞が出てたら読むことがありますが、そんな感じでしたか。まあそういう結婚生活を送っている人たちっていっぱいいるんでしょうねぇ。私たちのように自己主張の激しい人には考えられない人生だけどね。

Atsuko さんのコメント...

山歩きさん、うらやましいですね、そんなに簡単に国境をチョコチョコこられて。

せっかく海外にいる機会に英語の本を読むのも良いですが、何の本を読めば良いのかの情報がなかなか入ってこなくて、私もロンドンを離れていよいよ日本から遠ざかって、英語の本を本格的に読むようになりました。

一冊の本を読むのは時間の投資ですから、読んでみたいなあというのがないとなかなかその気になれませんね。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、いえいえ、これは毎週一人ずつ落とされていって、クリスマス前に結果が出るようになってます。CNNでもニュースになってるんですね。こちらでも土曜の昼のニュースで、「今夜ジョンとエドワードはゴーストバスターズを歌います。」とラジオのニュースでいっていました。

それが今夜は大変などんでん返しがあり・・・そちらのほうはブログに書きますね。

自己主張の激しい人って、私も入るのかな。