2019年9月5日木曜日

イギリスの政治がさらにえらいことになってる件について

政治での1週間は長いと言われますが、そう言えばちょうど一週間前に、ボリス・ジョンソンが国会を5週間閉鎖すると発表したのでした。この正式な用語はProrogueというのですが、その時はイギリス人でもこの言葉を知ってる人は少なかったのに、今やだれもが知ってる言葉となりました。

さて今日水曜の午後は、定例の「総理大臣の質疑応答」が国会で行われました。そこでは野党労働党党首コービン氏が、ジョンソンが「進展している」と主張する新EU離脱条約のドラフト案について質問すると、全く質問を無視して、まるで子供のように暴言の連発。結局5つの質問に一つも応えずに、終わり次第逃げるように出て行こうとしたところを、財務相の声明を聞かないといけないと、国会のリーダーに連れ戻されていました。

そして夕方以降に、昨日の続き、というか、第二弾のブレクジットの法案の投票が行われました。今日の法案は「離脱の期限時にEUとの離脱条約が出来ていなければ、政府はEUに離脱期限の延長を申し込まないといけない。」という、長ったらしいけど、要するに「条約なしの離脱禁止」の法律です。

昨日の法案は、21人の与党保守党員がジョンソンに逆らって賛成票を投じましたが、今日はさらに一人増えて、22人がこの法案に賛成し、楽々下院を通過しました。

それに反応して、ジョンソンは野党に喧嘩を売るように、国会解散総選挙を提議しました。が野党は、労働党もスコットランド国民党も「総選挙は大歓迎だけど、ジョンソンは信用できないから、『条約なしの離脱禁止法』が立法化されるまでは、これは受けて立たない。」とあっさりと受け流し。「卑怯者、臆病者、チキン!!」などのジョンソンの罵声も知らん顔です。

さあこれで一安心・・・・とはまだ行かないのですよ。

というのは、これはまだ下院(日本でいう衆議院)を通っただけなので、上院で可決されなければいけません。が、上院も下院と同じく来週から閉鎖になりますから、こちらも大急ぎで審議をしないといけません。なんでも、今日は100以上の細かい法案があるそうで、それが全部終わってからこのブレクジットの法案を審議するということで、ニュースで寝袋持ち込みで国会議事堂に向かう上院議員が映っていました。夜中を過ぎると予想されてます。(追記 この部分ちょっと間違ってました。翌日(9月6日)のブログで説明します。)

そしてここでまたイギリスの民主主義制度に関するややこしいことは、イギリスの上院は貴族院なのです。つまり選挙で選ばれている議員ではないのです。さすがに世襲の貴族は今は少ないらしいんですが、それでも何人かはいるそうです。(もっと多いかもしれません)。ではどういう人が貴族院の議員かというと、元大臣とか元総理大臣とか、イギリス国教会関係の人とか、ビジネスリーダーとか・・・。あとはどういう人がどういう基準で選ばれてるのか知りませんが、まあ「長年社会と広くかかわって貢献してきた人達」と言えます。

そう言うのってありえないくらい反民主主義だと思えるし、実際そう思ってるイギリス人も少なくはないと思うのですが、なにせ長年これでやってきて、しかも実際このシステムでうまく行ってるので、特に問題になることもありません。血の気の多い下院議員が通した法案を、年季の入ったの知恵ある上院議員がもう一度目を通して、ごくまれに「これはちょっと考えなおしたほうがいいんじゃないの」という感じで、下院に戻ってくるようです。これをさらに下院が可決したら、もう上院には行かないで立法化することが出来るはずです、多分。(すみません、ここはうろ覚えですので、多分、です。)

で、今晩の上院の動きなんですが、もちろん可能性としては上院で否決ということもあり得ます。が、なにせこれだけ世間を騒がせて、イギリスのデモクラシーと国民の生活の危機がかかっていて、22人もの保守党議員が政治家生命を投げうって上院までたどり着いた法案です。ここで、選挙で選ばれたわけでもない上院が否決したら、それはそれは、もうとんでもないことになるんじゃないかと思います。貴族院の存在自体が問題化されることもありえるでしょう。

なので、テレビの政治解説者の感じでは、まず通過するでしょうという見方のようです。むしろ、この前に山積みになってる細かい法案をどんどんフルスピードで片付けないと、時間切れになってしまうことのほうが、心配のようです。

で、もしもこのシナリオ通りに事が運べば、次の話題は総選挙になります。(が、なにせ1週間前は、条約なしの離脱はほぼ不可避と言われてましたから、私はまだまだ安心してないのですが。)

そもそものブレクジットは、保守党カメロン首相が国民投票をしたことが発端で、それから延々と一時の休みもなく今の修羅場につながっているのですから、保守党は選挙で負けるだろうと普通は思いますよね。それが、これがイギリスの選挙制度の問題などもあり、今回もまだまだ保守党有利という声が強いです。オピニオン調査も保守党有利のようです。私には気が遠くなるくらい信じられないことです。

ですからイギリスの政治ドラマからは目が離せないですよ、皆様。

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