2012年3月5日月曜日

アンデスの飛行機事故その3

雪崩の後も救助がないという状況は変わりません。助かるためにはとにかく自力で下山するしかありません。それで比較的元気な3人が助けを求めに下山するという計画になりました。でも前回の試みで、むやみやたらと歩いても仕方がないということがわかりましたので、この3人にとにかくエネルギーを蓄えさせるということになりました。

食べ物を一番多く与え、夜寝るときもいちばん暖かい場所で寝られるよう計らわれました。この一人は「つまり僕達は最後の希望のレースホースだった。」と言っていました。皮肉にも聞こえる発言なんだけど、それは事実なので、ただ淡々と語っただけなんでしょうね。

そして機会を待つことになりました。南米なので12月が夏至です。今は11月くらいなのでしばらく待てばいくら高山でも雪は少しは溶けるし、ブリザードの危険も減ります。しかし一方では、時間が経てばたつほど衰弱していきますから、夏至まで待つわけには行きません。

この3人は自分達で志願したようです。名前はナンド、ロバート、ティンティン。

ナンドが志願したのは他のメンバーにはない特別な 理由があります。彼のお母さんと妹も同じ飛行機に乗っていて亡くなったのです。それで、このままではその二人の遺体も食料として使わなければいけない状況が迫って来ていました。ナンドはそれまでに、何とかしてこの場を抜けたかったのでした。

けれども一方で、助けを求めに行くことは非常に危険です。雪に囲まれた山は険しく、3人は何の装備も経験もないどころか、地理すらわかりません。健康状態ももう2ヶ月も山にいるのですから、相当衰弱しているはずです。山を越えていったところで、数日以内に人間の住むようなところにたどり着ける保証は何もないのです。

それで3人はなかなか出発することができないでいましたが、また別のメンバーが衰弱死したことで、ロバートが決心しました。

出発するときはもちろん彼らは死を覚悟でした。残されていく仲間達にとっても、これは生きるか死ぬかのギャンブルです。3人が下山できなければ、もう誰にも希望は残されていないのです。

出発時にある一人がロバートに、「絶対うまくいくと信じてるよ。」といってくれたと回想していました。「あいつは僕よりも僕を信じてくれていた。」そんなちょっとした言葉が人間の心を大きく支えることがあるんですね。

さてさて、この話の続きはまた明日です。
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2 件のコメント:

あくあ さんのコメント...

ちょっとした言葉が人を支えることはありますよね。その影響力ってすごいと思いますよ。今そういう本を読んでるんですが、偽薬のプラシーボ効果なんかと似てるのかもね。一方、ちょっとした言葉に傷つけられて、その傷がずっと癒えないこともあります。人の支えになる言葉をかけられる人でありたいと思いますね。

Atsuko さんのコメント...

あくあさん、私もこの最後の部分がジーンとしました。言葉ってそうですよね。外国に住んでると、たまに日本に帰ると、日本語に敏感になってるので、人の言う言葉の多くがただの常套句だったり、良く考えもせず習慣で言っているのが気になります。
もっと自分の言う言葉を吟味したいなあと最近思ってます。