2011年10月7日金曜日

クリエーティビティー教育

俳句って書いたことありますか? 私はないのですが、うちのチャーリーは8歳くらいのときに学校で書いていました。

俳句といってもこちらで言う俳句は、5・7・5にシラブルがなっているというだけのシンプルなもの。日本の俳句とはかなり違いますが、詩の定型としては定着しているようで、こんな風に学校で習ったりします。
チャーリーの俳句はこちら

詩や俳句に限らず、イギリスでは学校の「国語」の時間は「書く」時間が多いです。たとえば国語の宿題はいくつか難しい言葉を与えられて、それを使った文章を作りましょうと言うのがよくあります。

たとえば今週のチャーリー(小学校6年生)の宿題の単語のひとつはPiteously(憐れみをこめて)。それでチャーリーの書いた文章は、

As I lay dying on the ground, my murderer looked at me piteouisly, but I didn't want her sympathy. (地面で死にかけている私を、殺人犯は憐れみの目で見た。だか彼女の同情など欲しくはなかった。)

私が小学生の頃は国語の時間と言えば教科書を読む読解ばかりでした。これは中学でも高校でもあまり変わりがなかったように覚えています。小学校では週に一度作文の時間があり、これが嫌でした。どうして嫌かと言うと、遠足だとか運動会だとかつまらないことばかりについて書かされたからです。どういうことがあったか描写し、それについて感想を書く。そういう単調な作業ばかりだったので、4年生くらいには、「xxxxxxということはありましたが、とっても楽しい遠足でした。」とか、先生が満足するようなフォーマットを編み出し、適当にお茶を濁していました。先生もそれで納得していたようなので、こんなものじゃ文章力が上達するはずはありません。オリジナリティーだとか、創造性だとかを伸ばすなんてことはぜんぜん頭になかったと思います。

読書感想文も嫌でした。これは文章力と言うよりは、課題図書をちゃんと読んでいるかチェックするために書かされているようなものだったので、それならそれでこちらもあとがきを読んで適当にはしょって書くとか、こつをつかんで無難にかわしていました。

想像力を羽ばたかせて、文章で自由に創作したこと。そんな記憶はまったくありません。とにかく作文でも読書感想でも小論文でも、事実に基づいたことばかりを書かされました。句読点の使い方だとか、段落の変え方などの技術的なことは覚えたけど、肝心の文章力はぜんぜんつかなかったと思います。おそらく先生も、フィクションの書き方なんて教える技量がなかったんでしょうね。

中学1年生のとき頭のよかった同級生が転校したのですが、その時に「私の趣味は小説を書くこと、将来は小説家になりたいです。」と言ったのが記憶に強くあります。「中学生でも小説なんてかけるのか」とすごく感心しました。

こっちの子供はよくフィクションを学校で書いています。小説などというとあらすじだとか構成だとかいろいろ大層に聞こえますが、たとえば上のチャーリーの例のように、まったく文脈なして短文を書くこともあるし、数週間かけて まとまった話を書くこともあります。

簡単な例だと、「3匹の子豚」の話を自分流にアレンジして、エンディングを変えて書きましょうだとか、先に書いた俳句だとか、子供でも取り組みやすいやり方はいろいろあるようです。

日本では俳句は季語がいるだとか、 川柳は風刺が入ってるだとか学校で習いました。でも実際に「じゃあ作ってみましょう」と創作したことはないと思います。もしかしたら申し訳程度に一度くらいはやったかもしれないけど、毎週毎週練習を重ねてなんてことは決してありませんでした。

じゃあイギリスは日本よりも作家が多いかというとそんなことはない様に思いますし、日本人のブログ人口は世界一とも聞いているので、日本人が文章をかけないかというとそんなことは全然ない。でもクリエーティビティーという意味では、日本の学校教育は偏ってるなあ思ってしまいます。

もうひとつ驚いたのは音楽です。イギリスの音楽教育はすごく劣っていて、たとえば小学生は楽譜はぜんぜん読み方も知りません。 楽器が弾けたり楽譜が読めるのは、家でピアノなどの楽器を習っている子供だけです。

でも中学では作曲をするんですよ。ルイは中学2年生なのですが、クラスの中のルイを含めた数人だけが楽譜が読めます。それでその生徒達は今学期は作曲をすることが課題になっています。ただ単に「曲を書け」といわれてもどうしたらいいかわからないので、ちゃんとやり方を教えてくれます。

とりあえず最初の作品は、好きな音楽をいくつか選んで、その中から好きな小節を選んで、それをつなげてアレンジしてごらん、という感じみたいです。

中学校は5年生までなのですが、その4年目と5年目のときにGCSEという試験を受けます。音楽は選択なのですが、選択した生徒は、試験の3分の1は作曲だそうです。その頃はまだ15歳くらいなんだけど、多くの中学生が作曲するんだねえと思うと、日本とはえらく違うなあという気がします。

私が中学生の頃は週に2回音楽があり、期末テストも年に3回あったけど、音楽のセオリーや作曲家の名前ばっかり覚えて、ぜんぜん楽しかった記憶がありません。

日本ってフィクションを書くにしても作曲をするにしても、そういうことができるのは一部の才能のある人だけで、普通の生徒は句読点や文法やクレッシェンドとディクレッシェンドの違いがわかっていればいいという教育方針なんでしょうか?


日本人は応用はうまいが、オリジナルにゼロから物を作り出すことは下手だと世界的に評判がありますよね。(少なくとも昔はあったけど、今はもしかして変わったかも?) こういった日英の学校教育の違いを見ていると、やっぱりそう言われても仕方ないなあという気がします。

でも日本のほうがGDPも(まだ僅かに)高いし、衛生的で礼儀正しくてすみやすいし、日本のコンテンポラリー文化は今世界的に高く評価されてるって言えばそれも本当のことだから、日本の教育はなってないというわけではないけど・・・でも私が小学生、中学生なら、イギリス風のオリジナリティーを育む教育を受けたかったなあと思います。

逆に言えば、日本ってあんなに個人性を育まない教育なのに、作家もアーティストもたくさんいるって言うことは、個人個人の中には、いかに日本的な抑圧的な教育でも芽を摘むことができない才能が眠ってるって事なんでしょうか。

話は大きく変わりますが阪神は今日で4連勝。私の大好きな岩田君が今日は完投完封でした。 火曜からの3連戦、今のところ全勝。この調子で13連勝や!!

やっとこさ料理ブログ更新。ぜひごらんください。失敗したジャムやジェリーの作り直し方

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2 件のコメント:

あくあ さんのコメント...

イギリスの教育の話はとても面白いです。ほんと日本の教育と随分違うよね。といっても子供がいないから最近の日本の教育のことは知らないんだけど。ほんとに子供にはいろんな才能や可能性があるのに、教育や親や周りの育て方一つで伸びたり縮んだり屈折したりするんだろうなぁ・・・。そんな中、日本にクリエイターがたくさんいるのがどうか、その数や質の国際比較はよくわからないけど、どうなんでしょうね?

Atsuko さんのコメント...

教育の仕方というのは将来にかかわるのはもちろんのこと、その国の文化とか国民性とかを反映していますよね。私の記憶では、特に中学の頃はまるで軍隊みたいな教育で、ぜんぜん面白くなかった。
日本のクリエータの数、どうなんでしょうね。そういう人たちは海外教育を受けた人が多い気もするし。