イギリス人はタフだ、しかも階級の高い人ほどタフだという話を昨日書いたら、あくあさんからもっと知りたいとのリクエストがありましたので、もうちょっと書いてみます。
「イギリスはこういう国である 」という意見や感想はあちこちで耳にすると思うんですが、イギリスってやっぱり階級社会。階級を避けてはイギリス論は語れないと思うんです。しかしイギリス人自体はあんまり階級の話をしません。よっぽどなかのいい間柄でないとその話はでないと思うんですが、イギリスに住む外人たちは時々この「階級」を口にします。するとイギリス人は、なんかびくっとしてる感じですね。
やっぱり私達外国人は何年たっても外国人だからイギリスの階級社会の外にいるし、中にいる人にとっては口にしにくいトピックなんでしょう。
階級の話をする前に、はっきりさせておかないといけないことがあります。日本では国民総中流とのことですが、イギリスでは上流階級は王室と何らかの親戚関係のある人たちのことです。日本で言えば公家のようなものかな。そして中産階級は、銀行家だとか弁護士だとか医者だとかのホワイトカラーの職種。そして労働者階級は、自分は生産の手段を持たないで、働いて収入を得ている人たち。ブルーカラーですね。
さて話を戻して、このタフさについて一番最初に思ったのは、イギリスで初めて働き始めた頃です。シティーのトレーディングルームにいたので周りは大卒の中産階級の若い人たちばかりでした。それでその一人と話していたのですが、彼はイギリスの寄宿生のプライベートスクールに行ったのですが、毎朝朝食前にランニングがあり、その後冷たいシャワーを浴びないといけなかったそうです。イギリスの水ですからね。真冬なら凍ってもおかしくないくらいの冷たさだと思います。
最近はそこまでスパルタな学校はないと思うんですが、やっぱり寄宿生の学校って厳しくって「質実剛健」なんじゃないかなあ。 ルイは3月にデボンの水泳で有名な私立学校の寄宿舎に1日体験入学したんですが、水泳部の朝練は遅番は6時から、早番は5時からです。ということは起床は4時半。しかもこれ中学生ですよ。
まあ朝に関しては、階級に関わり無く、イギリスのほうが早いです。シティーで働いていたときはディーリングルームは毎朝7時半ミーティングでした。でも大工や土木業などの労働者階級の職業の人も7時とか8時とかに始業する人が多いし、そういえばその頃郵便屋さんの配達も家を出る前に来ていたので、6時半とかに郵便が来ていた記憶があります。(まあその頃は郵便のサービスがよくって一日2回配達があったんですが、今はそんなにサービスはよくありません。)
一説によると、伝統的には労働者階級が早朝から働いて、弁護士や銀行家などの中産階級は大名出勤で10時ごろから始業だったとか。シティーも昔は株式取引所のフロアだとかは中卒のたたき上げの若者が早朝から走りまわって働いていたそうです。昔は株屋なんてのは中産階級の仕事ではなく、上昇志向のある労働者階級のたたき上げの仕事だったそうです。それがシティーではサッチャー政権以来のヤッピーのがつがつしたエリートが朝早くからはたらくようになったとか。
話がそれました。 タフさの話です。
昔で言えば植民地の時代はイギリス人の貿易会社の経営者だとか、中産階級の人たちがインドだとかマレーシアだとか香港だとかに家族と駐在しましたが、そのころなんてコンディションはすごく悪かっただろうし、不衛生で伝染病もよくあることだったし、それはそれは大変だったそうです。
まあそういった人たちは、現地人に馴染もうなんて気持ちは全然ないし、現地の文化だとか人に対する思いやりや親睦の気持ちも無かったようなので、同情する気にはなりませんが、それでもイギリスでぬくぬく暮らしてきた良家の奥様達やお子達がそういった途上国で暮らすのはすごくタフだったようです。
それから軍隊のエリート達も中産階級の仕事です。これももちろんすごくタフな世界。チャールズ皇太子の弟のアンドリュー王子は海軍にいたし、去年結婚したウィリアム王子もハリー王子も陸軍に所属しています。たぶん中では、周りの人はそれなりに気をつかってはいるものの、他のオフィサーたちと同じような扱いになっていることと思いますよ。
特にイギリスでは産業革命以降は中産階級の子息は将来、軍隊を率いたり植民地を管理したりしないといけないから、厳しいタフな教育がされたのだと思います。
身近な話になると、昨日のエックスムーアチャレンジなんてとってもタフなイベントだし、子供達のライフセーバーもこのイギリスの激寒の夏の日に大荒れの海に入ってトレーニングだとか、私の普通の母親の本能ではとても自分の子供にやらせたくないことばかり。ボーイスカウトなどは嬉々として泥だらけのコンディションで息が白いくらい寒くてもキャンプしたりしてるようです。8歳から参加できる地元のラグビークラブも、入会説明で、「どんなに天気が悪くてもトレーニングは中止にはなりません。」と言われました。
そしてこれもよくよく見回すと、やっぱり中産階級の家庭がこういうイベントに取り組んでるんですよ。 もちろん別に壁があるわけじゃないので誰でも参加できるんですが、結果としてはそんな感じです。
繰り返しますが、イギリス人ってタフですよ本当に。日本人なんて比較するとひ弱だと思いますね。しかもそのタフさってすごく基本的な、野性的な動物的なタフさです。これってやっぱり寒くて雨が多いことに関係してるのかなあ。
でも反対に日本の入社数年目の会社員なんて見てると、上司にいじめられたり虐げられたりされても耐えてるし、中学高校のクラブなんかでも先輩が無茶苦茶威張ってるし、その辺は打たれ強いというか、自虐的なタフさはあるのかな。
たとえて言えば、イギリス人と日本人の20歳の男女10人ずつを、アマゾンのジャングルみたいな文明とは遠く離れた土地にテントとバケツとシャベルだけ渡して放り出したら、日本人のほうが絶対先にギブアップするだろうなあと思います。
でも逆に人間関係のこじれにこじれた会社のねちねちと嫌味な上司の下で、つまらない仕事を毎日遅くまで 働かせたら、イギリス人のほうが絶対先に根を上げると思いますけどね。これを精神的なタフというのは、私は抵抗がありますが。(むしろ自尊心の無さだと個人的には思ってます。)
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